【長谷川穂積の拳心論】初ダウンも冷静だった井上尚弥 衝撃TKO劇「普通はすぐに立ち上がったりするものだが-」
「ボクシング・四大世界タイトルマッチ」(6日、東京ドーム)
スーパーバンタム級4団体タイトルマッチで、統一王者の井上尚弥(31)=大橋=が元世界王者で挑戦者のルイス・ネリ(29)=メキシコ=に6回1分22秒TKOで下し、ベルト4本の防衛に成功した。WBO世界バンタム級5位の武居由樹(27)=大橋=は王者ジェーソン・モロニー(オーストラリア)に3-0で判定勝ちし新王者に。WBAバンタム級王者の井上拓真(28)=大橋=は同級1位の石田匠(井岡)に3-0の判定勝ちで2度目の防衛。世界主要4団体のバンタム級王座は日本選手が独占した。歴史的な34年ぶりの東京ドーム興行を3階級制覇の元世界王者・長谷川穂積氏が、戦いを分析した。
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井上尚弥選手が、いきなり1回にネリの左フックをもらってダウンを喫したのはビックリした。ただ、普通はすぐに立ち上がったりするものだが、冷静にカウント8まで聞いていた。こんなピンチもあると想定して、しっかりシミュレーションをしていたのだろう。
落ち着きを取り戻した2回以降は回を重ねるごとにペースをつかみ、5回のダウンはショートの左フックを短くきっちり当ててみせた。これでネリは、かなりのダメージがたまった。最後のダウンも右アッパーから右ストレートのコンビネーション。東京ドームという大舞台で存分に魅せて勝ち切る。ネリとの力の差を見せつけたし、周囲の期待を上回る尚弥選手ならではの勝ち方だった。
武居由樹選手は2回にローブローで減点されたが、その後もひるまずに左ボディーを打ち続けて、メンタルの強さを発揮した。さらにモロニーがサウスポーが得意ではなく、優位に運ぶことができた。ただ、最終12回に急速にスタミナ切れしたのは今後の課題として残った。
井上拓真選手は前回の試合でKO勝ちしたことで、かなり自信をつけたようだ。こちらも1回にダウンに喫しながら、焦らず石田選手の後ろ重心のディフェンスの弱点をついて大差の判定勝ちにつなげた。武居選手が王者になったことで、バンタム級は4団体が全て日本選手が王者。すごい時代になった。これから本当に面白くなりそうだ。(デイリースポーツ評論家)