まさかの決着に会場どよめき 井上尚弥が7回TKO勝ちもドへニーが突如腰痛め試合続行不能に あ然の井上「こういう試合もある」

 「ボクシング・4団体統一世界スーパーバンタム級タイトルマッチ」(3日、有明アリーナ)

 4団体統一世界スーパーバンタム級王者・井上尚弥(31)=大橋=が挑戦者で元IBF王者のTJ・ドヘニー(37)=アイルランド=に7回TKO勝ちで防衛に成功した。通算成績を28戦28勝(25KO)とした。井岡一翔(志成)を抜き、日本選手歴代単独1位の世界戦23勝を達成した。WBCとWBOは3度目の防衛、IBFとWBAは2度目の防衛に成功した。

 1回は慎重な立ち上がり。距離を測るドへニーに、井上が時折強烈な1発をみせる形で時間が過ぎた。2、3回は慎重な展開が続いた中で、ロープ際で井上が強烈な右を繰り出しながら追い詰めていったが、ドへニーもうまく距離をとって、交わしていく。

 4回は互いに手数が増えていき、ドへニーも強烈な左を見舞っていく。井上は右ボディから打開していくと、終了間際に強烈な右を打ち込んだが、ドへニーは大丈夫と言わんばかりに手を広げた。

 5回、ドへニーの左ボディを受けながらも井上が徐々に前へ、主導権を握っていくと、6回は互いに手数が増えて、打ち合いに。しかし、徐々に井上がパンチ力の違いで押し込んでいき、完全に井上ペースになった。

 7回はゴングから井上が一気に前に出て、ボディを連打したところで、ドへニーが負傷。腰を痛めたか、突如右の腰をおさめながら足を引きずるようなジェスチャーをみせ、レフェリーが試合を止めた。会場は騒然となり、井上もややあ然とした表情を浮かべた。

 試合後、ドへニーはコーナーに倒れ込み、動けない状態となり、関係者2人の肩を借りながら、痛々しい姿で花道を引き揚げた。

 消化不良の決着に観客は困惑し、どよめき。足早に会場を後にする姿もあった。

 勝利者インタビューで井上は「ダメージの蓄積はあったと思う。こういう試合もある」と振り返った。その後、試合について「平日の足元の悪い中、ありがとうございました。今回テーマというか丁寧にボクシングを組み立てるように、ボクシングというものを理解して組み立てることを意識しました」とし、「内容、結果として皆さんの満足できる、期待していたような試合内容ではなかったと思いますが、また次に期待していただければ。まだまだ未完成。決して今日の試合内容は自分の出来の悪さじゃなく、ドへニーのキャリア、試合運びのうまさだったと思う」と、まとめた。

 井上にとってこれがスーパーバンタム級での4戦目。「仕上がりはバッチリ」と、肉体の階級への適応にも手応えを持った中での一戦だった。ドへニーは1日で12キロ以上増やしたこともある、計量後の大幅なリカバリーが特徴的な難敵だった。当日の体重が発表され、井上は前日計量から7・4キロ増の62・7キロ、ドへニーは11キロ増の66・1キロ。今回も11キロ増と大幅に増やしてきた。井上は「自分を相手に10キロ以上戻したらボクシングはできないよ、というのを見せてあげようと思っている。階級制のあるボクシングは体重があればいいだけではない。そういうところも含め明日はボクシングを見せていきたい」と話していたが、宣言通り問題にせず、圧勝した。

 ◇井上尚弥(いのうえ・なおや)1993年4月10日、神奈川県座間市出身。相模原青陵高時代にアマ7冠。2012年10月にプロデビュー。14年、WBC世界ライトフライ級王座。WBO世界スーパーフライ級王座、18年、WBA世界バンタム級王座を奪取し3階級制覇。22年、アジア勢とバンタム級では初の4団体統一。米専門誌「ザ・リング」選定のパウンド・フォー・パウンドに日本人で初めて選出。23年、スーパーバンタム級でも4団体統一し、史上2人目の2階級での4団体統一。戦績27勝(24KO)。165センチ。右ボクサーファイター。

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