ボクシング 長谷川穂積氏が井上戦を評論「井上尚弥選手を怖がって何もできなかったドヘニー」
ボクシングの世界スーパーバンタム級4団体タイトルマッチで、統一王者の井上尚弥(大橋)が、元世界王者で挑戦者のTJ・ドヘニー(アイルランド)に7回16秒、TKO勝ちし、4団体の王座を防衛した。WBCとWBOは3度目の防衛で、IBFとWBAは2度目の防衛。世界戦通算23勝目とし、井岡一翔(志成)を抜いて日本選手歴代単独1位となった。また、WBO世界バンタム級タイトルマッチで、王者の武居由樹(大橋)が、フライ級との2階級制覇を狙った同級1位の比嘉大吾(志成)を3-0の判定で退け、初防衛に成功した。デイリースポーツ評論家・長谷川穂積氏が、この2試合の戦いを分析した。
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井上尚弥選手の試合は意外な終わり方となってしまった。ただ、負傷したアクシデントを含めて、これも実力のうち。ドヘニーはもっと手数を出してくると思ったが、尚弥選手を怖がりビビってしまって何もできなかった。一発狙いの左フックを十分に警戒して、相手との距離感やパンチ力をしっかりと把握していた。
尚弥選手ほどのレベルになると、常に倒して勝つことを求められる。もうプレッシャーでしかないし、最大の敵は前回の自分という状況になっている。それでも、スーパーバンタム級に上げてからの体つきとかも、まだ進化の余地がうかがえると思う。次回はスカッとしたノックアウト勝ちを期待したい。
武居選手と比嘉選手はスリリングな展開のいい試合だった。比嘉選手のダメージが蓄積して最終ラウンドは防戦に回ってしまった。これがチャンピオンとチャレンジャーの差。それでも、比嘉選手は持っている力を出し切ったと思う。
武居選手はトリッキーさ、知力を発揮して“武居ワールド”を存分に発揮した。さらに意外と打たれ強さもある。比嘉選手もラッシュをかけていたが、この頑丈さは大きな武器になる。まだプロボクシングのキャリアは10戦。チャンピオンでありながら、まだまだ伸びしろが十分にある。リング上のインタビューで那須川天心選手の名を挙げていたが、対戦が実現すれば本当に面白いカードになるだろう。