矢吹正道 2年7カ月ぶり世界王座返り咲き「負けたら引退やと思ってた。ホンマに良かった」妻子と弟・力石も歓喜
「ボクシング・IBF世界ライトフライ級タイトルマッチ」(12日、愛知県国際展示場)
指名挑戦者で2位の矢吹正道(32)=LUSH緑=が王者のシベナティ・ノンシンガ(25)=南アフリカ=を9ラウンド1分50秒、TKOで破り、2年7カ月ぶりの世界王座返り咲きを果たした。ノンシンガは初防衛に失敗した。
矢吹93パーセント、ノンシンガ77パーセントと、ともに高いKO率を誇る強打者対決。矢吹のセコンドには弟でIBF世界スーパーフェザー級3位、WBC6位、WBO8位の力石政法が付き、最前列では妻と長女、長男が声援を送った。
矢吹は序盤から、左ジャブからの右がさえわたり、8ラウンドには右ストレートの連打で膝を着かせて最初のダウンを奪った。9ラウンドに入って追い詰められたノンシンガが出てくるが、矢吹は右フックで2度目のダウンを追加。右ストレートで3度目のダウンを奪ったところで、レフェリーが試合を止めた。
矢吹はリング上のインタビューで「(ノンシンガは)本物のチャンピオンなので、用意してきた。すごいモチベーションが上がった、あっという間の数カ月でした。想定内の選手で、高く見積もって準備できたと思います。前半に強い選手なので、前半に主導権を取られないようにして、後半このまま行こうかなと決めていました。(KOパンチの手応えは)ありましたね」と振り返り、「正直、負けたら引退やと思ってた。これでボクシング続けられるので、ホンマに良かった」と、引退を覚悟していたことを打ち明けた。
9月29日には長女と長男がジュニアチャンピオンリーグ全国大会で優勝しており、東京まで駆けつけた矢吹は「子供2人が全国チャンピオンになったので、すごい力になりましたね」と、パワーをもらったという。
今後については「はっきり決まっていないけど、階級上げてオラスクアガ選手とやりたいです」と、14日に有明アリーナでWBO世界フライ級王座の初防衛戦を行うアンソニー・オラスクアガ(米国)への挑戦を希望。「これで胸張って世界チャンピオンで堂々と言えます。これで錦(名古屋の歓楽街)歩こうかな」と笑顔を見せた。
その後のテレビインタビューでは「(ノンシンガが)中間距離で来たので、中間距離なら自信あるので、それに持って行けたのが勝因かなと思います」と分析し、「この試合がラストやと思ってたんで、ボクシング続けられるのがうれしい。誰にも何も言われる筋合いないし、ホンモノになれたかなと思います」と感慨にふけっていた。
また、リング上では妻から「おめでとう!」、長女から「めっちゃうれしいです!」、長男から「おめでとうございます」、力石から「チョー気持ちいい」と祝福を受けていた。
矢吹は2021年9月に寺地拳四朗(BMB)からWBC世界ライトフライ級王座を奪取したが、翌年3月のダイレクトリマッチで奪回された。今回はそれ以来、2年7カ月ぶりの世界戦。昨年5月の左アキレス腱断裂という試練を乗り越えての挑戦だった。
なお、IBFでは当日計量を課しており、リミットはライトフライ級リミットの108ポンド(48・9キロ)に対して、10ポンドオーバーの118ポンド(約53・5キロ)。この日の朝、それぞれの宿舎で当日計量が行われ、ノンシンガは52・7キロ、矢吹は53・2キロでクリアしていた。