袴田巌さんが9年ぶりボクシング観戦 姉・ひで子さん「巌はボクシングしか知らない人間。青春そのものだと思います」
1966年に静岡県の一家4人が殺害された事件で再審無罪が確定した元プロボクサーで元日本フェザー級6位の袴田巌さん(88)が29日、東京・後楽園ホールで開催されたボクシング興行に姉のひで子さん(91)と来場し、試合を観戦した。
袴田さんがボクシング会場を訪れるのは2015年以来、9年ぶりで、再審無罪の確定後は初めて。車椅子で、黒いハットに青いジャケット、チェックのシャツに蝶ネクタイを結んでいた。ひで子さんはリングに上がって再審無罪を報告。袴田さんもリングに上がる予定だったが、上がることはなかった。
袴田さんはその後に行われた記者会見にひで子さん、WBC世界バンタム級王者の中谷潤人(26)=M・T=と出席したが、体調がすぐれないようで「帰らなくてはしょうがないでしょう」と言い、途中退席した。
袴田さんがリングインしなかった理由について、ひで子さんは「これも拘禁症状の後遺症だと思います。やっぱり後遺症は残っております。そういう時は何を言っても聞かない。後遺症ってのはおそろしい。48年間の拘置所生活が今の巌に出ているんです。死刑囚でなくなったとしても後遺症は残っております。これは一生治らないと思っております。そのままの巌を受け入れて今のところ生きております」と話した。
静岡県から後楽園ホールまで来られたことは「もちろん出かけて来られたということは大変うれしいと思っております。もちろんこれが最後っていうことではなくて、また機嫌のいい時には連れてきたいと思っております。ここまで来たということは良かったと思っております」と喜び、「これからはどこにでも連れて行こうと思っているんですよ。外国でもどこでも本人が行くと言えばね」と話した。
58年間に及んだ闘いについても、ひで子さんは「私は(袴田さんが)ボクシングで鍛えていたから、頑張れたと思っております」と述べ、「巌はボクシングしか知らない人間ですからね、ボクシングを愛していることは間違いないと思います。一番いい時に、30歳までボクシングをやってたんですから、青春そのものだと思います」と、袴田さんにとってのボクシングを説明。
今後について「冤罪(えんざい)の被害者は多いですね。ともに戦って来た同志ですよ。だから一人でも早く再審開始になるように、再審法改正もそうですが、すべからく関わっていきたい」と話し、27日に静岡地検の山田英夫検事正から謝罪されたことには「許すも許さないもない。(畝本直美)検事総長さんのおっしゃったこと(無罪判決を、10月8日に発表した談話内で「到底承服できないもの」とした)、私は検察庁の都合でああおっしゃったんだと思っている。巌は無実であるから無罪になって当たり前だと思って闘っておりましたので、そんなことは問題にしておりません」と語った。
中谷は支援活動に参加してきたが、この日が袴田さんとは初対面。「こうやって後楽園ホールまで来ていただいた、場所にいさせていただいて良かったなという気持ちで『おめでとうございます』という言葉をかけさせていただきました。無罪を獲得されて、長い間戦われてこられたので、すごく僕自身も力をもらいました」と話した。