井上尚弥 グッドマン代役に韓国の「トラブルメーカー」キム・イェジョンと対戦 大橋会長「ちょっと嫌な予感がするけど」
「ボクシング・4団体統一世界スーパーバンタム級タイトルマッチ」(24日、有明アリーナ)
ボクシングの大橋ジムは11日、世界スーパーバンタム級4団体統一王者の井上尚弥(31)=大橋=に24日に挑戦する予定だったサム・グッドマン(26)=オーストラリア=が再び左目を負傷し、対戦相手をWBO同級11位のキム・イェジョン(32)=韓国=に変更すると発表した。当初は昨年12月24日の予定だった防衛戦だが、グッドマンの左目負傷により1カ月延期したものの、2度のドタキャンは異例。横浜市内で会見した大橋秀行会長(59)は「50年で初めて」と苦笑いするしかなかった。
グッドマンは拳を交えることもなく尚弥を翻弄(ほんろう)し続けた末、最後まで“BAD”な印象だけを残して消えた。試合13日前になって、またも最後のスパーリング中に左目の上をカット。傷は前回より3倍ほど大きく、全治まで約半年を要するという。この日早朝に連絡を受けた大橋会長は驚きながらも「想定内。こういうこともある」と、今回はあらかじめリザーブを用意していたため、すぐ挑戦者変更を決めた。
昨年12月に続き、2回連続の世界戦ドタキャンは前代未聞で、大橋会長は「ボクシングを見て50年だが、こんなことは初めて」と驚いた様子。1カ月という延期を受け入れ、正月休みを返上して調整を続けてきた尚弥も一報を聞いて「えっ!?」と面食らったものの、SNSで「試合まで2週間を切ったが、切り替えられている。当日は最高のパフォーマンスをお見せする」と強調した。
急きょ代役として白羽の矢が立ったキム・イェジョンは、タフな右のカウンターファイターで、日本選手には過去7戦全勝という“日本人キラー”。大橋ジムを通じ「井上選手はいつか戦う相手として常に研究していた。いつでもリングに上がる準備はできている。日本選手に7戦7勝で、キャリア最大の大一番で8勝目を飾りたい」とコメントを寄せた。
そのリングネームは「トラブルメーカー」。大橋会長は、本物のトラブルメーカーに振り回されたばかりとあって「ちょっと嫌な予感がするけど」と苦笑いしつつ「いい試合をやれるように期待したい」と切り替えを強調。“グッドマン狂騒曲”に足を取られてしまったが、モンスターにとってはピカソ、アフマダリエフといった名前も取りざたされるビッグマッチイヤーの幕開けに、立ち止まってはいられない。
◆日本開催のボクシング世界戦における最近の主な試合前アクシデント
▽2018年3月 前年8月のWBC世界バンタム級タイトルマッチで山中慎介(帝拳)がルイス・ネリ(メキシコ)に敗北。しかし、後にネリのドーピング検査陽性が発覚した。リベンジマッチが組まれ、前日計量でネリが1.3キロ超過。試合は行われたが、山中は2回TKO負けした。
▽2020年11月 WBA世界ライトフライ級タイトルマッチで王者・京口紘人(ワタナベ)とチーフトレーナーが、試合前日のPCR検査で陽性判定を受けて中止に。検査当日の午前には調印式と前日計量を済ませていたが、コロナ禍の犠牲となった。
▽2024年7月 WBO世界スーパーフライ級タイトルマッチは王者・田中恒成(畑中)の初防衛戦だったが、挑戦者のジョナタン・ロドリゲス(メキシコ)が前日計量で2.9キロ超過。計量失敗による試合中止の初めてのケースとなった。
▽2024年12月 WBA世界スーパーフライ級王者のフェルナンド・マルティネス(アルゼンチン)がインフルエンザに感染したため、井岡一翔(志成)が挑戦予定だった31日のタイトルマッチが中止に。前日計量直前の30日朝に王者陣営が中止を申し出た。