京口紘人は判定で敗れ3階級制覇ならずも完敗認める「王者は強かった」進退は「自分と見つめ合って決めたい」 11回微妙なダウン取られ場内怒号も
「ボクシング・WBO世界フライ級タイトルマッチ」(13日、両国国技館)
元世界2階級制覇王者で同級14位の京口紘人(31)=ワタナベ=が王者アンソニー・オラスクアガ(26)=米国=との一戦で3階級制覇に挑戦。0-3(113-114、110-117、109-118)の判定で敗れ、王座奪取はならなかった。
最終12回を終えると、笑顔で互いの健闘をたたえ立った両者。京口は「ありがとう」と声をかけた。リングを下りると、客席で試合を見守った妻の亜希さんと言葉を交わした。
試合後は「3階級制覇の壁は高いようで、越えられるかな?というぐらいの壁だった。戦っていて、王者は強かった」と振り返り、11回のダウン判定については「ダメージブローでのダウンではなかったので冷静だった。『取られちゃった』というシンプルな感情。肩らへんをかすってバランスが崩れた。まあレフェリーが一番権限がある。ダウンを宣告した。それだけ。特にないです」とし、今後については「自分と見つめ合って進退は決めたいと思う」と話すにとどめた。妻と交わした言葉については「かっこいい姿を見せたいとは男なら誰でも思うところ。ベルトを巻く姿を見せたかったですけど、妻からは『よかったよ。面白かったよ』と。あっちの方が強い人間でした」と明かした。
1回から互いのパンチが交錯する緊迫した展開。カウンターのボディーに後退した京口だったが、逆に鋭いワンツーをヒットさせる場面もあった。2回は京口の左ボディーが当たると相手も応戦し、リング中央で打ち合った。中盤から左ジャブを多用してきた相手を、9、10回強い右ストレートを当てて見せ場を作った。しかし、11回に相手のパンチが上がってスリップ気味にダウンを奪われ、会場はどよめき「は~」と怒りの声も聞こえた。
17年7月にIBF世界ミニマム級王座を獲得。さらに18年12月にWBA世界ライトフライ級を獲得したが、22年11月にWBC王者の寺地拳四朗と王座統一戦を行い、敗れて陥落した。フライ級で再起し、三たび世界王座に手がかかる位置まではい上がってきた。今回31歳で挑戦が決まり、「自分のボクシング人生で一番大きな物になる」と決意を語っていた。
強打を誇る若き王者オラスクアガに挑むに当たっては「世界初挑戦の頃の初心に帰った感じ」と、何者でもなかった23歳の京口紘人に戻って汗を流した。「相手をぶっ倒したい。お互いがそう思いながら(調整期間を)過ごして、当日リングで殴り合うのって怖いじゃないですか。でもワクワクする。不思議ですよね。それがファイターなのかなって。試合に向けて、どれだけ濃い時間を過ごしたかに価値があると思っているので」。一朝一夕で“格闘家”を名乗ることもできる時代。しかし、過酷な減量、ギリギリまで追い込む練習にこそボクシングの真髄を見いだし、チャンネル登録者22万人を誇るYouTubeの更新も1カ月以上止めて、リング上での戦いに全てを懸けてきた。
自身にとって通算10回目となる世界戦だが、23年1月に結婚してからは初めてだった。ボクサーにとって食事もトレーニングの一環だが、妻の亜希さんはアスリートフードマイスターの資格も持っており、さらに栄養士もつけて家族で肉体をつくってきた。カロリーや栄養バランスを考え抜いたメニューを決められた時間に摂取し、「筋肉量も増えた。妻も今まで以上のサポートで、夫婦二人三脚で臨めている」と感謝の思いを拳に込めたが、頂点への道のりは険しかった。
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