山中V4“神の左”で160秒殺
「WBC世界バンタム級タイトルマッチ」(12日、大田区総合体育館)
まさに“神の左”だ。WBCバンタム級王者・山中慎介(30)=帝拳=が1回2分40秒、挑戦者の同級8位ホセ・ニエベス(32)=プエルトリコ=を左ストレート一撃でノックアウト。わずか160秒の速攻劇で4度目の防衛を果たした。山中はリングサイドで観戦したWBO王者亀田和毅(22)=亀田=に統一戦を呼びかけ、「この階級で最強を示したい。強い相手と戦いたい」とビッグマッチを熱望した。
あまりにも力の差があり過ぎた。試合開始のゴングが鳴って挑戦者ニエベスと対峙(たいじ)した山中は、瞬時に格の違いをつかみ取っていた。「相手と向かい合って、実力差を感じた」。サウスポー同士の対戦とあって、開始直後はお互いに右ジャブの差し合い。右ジャブを避け切れず王者が思わずのけぞるシーンもあったが、この後に強烈な左ボディーでニエベスの脇腹をえぐると、チャレンジャーが一気におじけづいてしまう。
ズルズルと後退する相手にグーンと伸びる左ストレートが突き刺さると、ニエベスは青コーナーまで吹っ飛ばされてダウン。何とか立ち上がったものの足元がおぼつかず、レフェリーがカウントアウト。山中の強さに場内があっけに取られるほどのフィニッシュだった。「ちょっと生意気ですが、もう少し試合をやりたかったのが本音。お客さんももっと見たかったと思います」と、恐縮しながらリング上でインタビューに答えた。
陣営の想像以上の進化ぶりだ。所属ジムの本田明彦会長は、「ニエベスはWBOでも2位だったし、ラテン圏内で一番いい相手を選んだが…。今の山中では左が当たれば終わってしまう」と感嘆。担当の大和心トレーナーも、「距離と間合いをつかむのが早い。それさえつかめば負ける気がしない」と王者の充実ぶりを評価する。天性の強打に加えて、抜群の距離感が支えるディフェンス。3連続KO防衛で確実に名王者への道を歩み続ける山中は、バンタム級王座統一をアピールした。
「どの団体とはこだわっていないが、やれば盛り上がると思う」とキッパリ。さらにWBAスーパー王者アンセルモ・モレノ(パナマ)の名を挙げて、「一番やってみたいのはモレノ」と強敵を志願した。王座統一、さらに海外進出へと夢は限りなく広がる。山中のチャンピオンロードは、無限の可能性を秘めている。