なでしこ秘話!宮間の演説で白星発進
「サッカー女子・ロンドン五輪1次リーグF組、日本2-1カナダ」(25日、コベントリー)
主将の涙の訓示で、なでしこが白星発進した。サッカー女子の1次リーグは25日、英国のコベントリーなどで開幕した。金メダルを狙うF組の日本はカナダと対戦し、前半33分、MF川澄奈穂美(26)=INAC神戸、前半終了間際には主将のMF宮間あや(27)=岡山湯郷=が追加点を挙げ、2‐1で競り勝った。試合前、宮間が「大切な思いと大切な人がいて、これからの6試合がある」などと鼓舞し、勝利へ一致団結した。日本は28日、スウェーデンと対戦する。
初戦前の緊張感が漂うロッカールーム。なでしこジャパンの選手、スタッフ全員がつくった円陣に、目を潤ませた宮間の声が響いた。
「ここに立てるのは選ばれた18人だけ。大切な思いと大切な人がいて、これからの6試合がある。このピッチに立てる喜びの下、お互いのために戦おう!!」。
落選してピッチに立つことができないメンバー、支えてくれた恩人、家族、友人…。さまざまな人たちの顔が脳裏に浮かび、なでしこたちは涙を浮かべていた。
「私もうるっときた」とFW安藤が言葉を詰まらせば、佐々木監督も「僕もジーンと来た。選手何人かも泣いていた」と打ち明けた。体の中からわき上がる感情、そして一体感。宮間の言葉で、なでしこは強固な一枚岩となった。
さまざまな思いを背負い、ピッチに飛び出したなでしこは躍動した。1‐0の前半44分、DF鮫島のクロスを、157センチの宮間が頭で合わせた。「前に大儀見選手がいたけど、何を思ったか、いける!と思った」。ゴールネットが揺れるのを確認すると、右手を天に掲げた。
ポルトガル遠征中の2月。宮間はMF沢に代わり主将となった。代表合宿で練習相手として呼ばれた男子高校生が「宮間選手なら、ウチの高校でもレギュラー」と舌を巻くほどの技巧派だ。主将の重責にも、「やれることをやっているだけ」と謙そんする。英国入り後には選手の各部屋に、試合までの日数を意識させる手作りカレンダーをかけて回るなど、ムードづくりも欠かしていない。
佐々木監督は以前、こう話していた。「誰かのためにという思いは、共感をパワーに変える、なでしこの原動力だと思う」‐。指揮官の言葉を体現するように宮間は言う。「みんなの顔を見たら、ここにいられて良かったなと。円陣の言葉も自然に出てきた」。これ以上ない、白星発進。感謝と決意を胸に戦う主将が、なでしこを金メダルへと導く。