陽子、夢散も涙なし…全力でメダル取る
「U20女子W杯・準決勝、日本0-3ドイツ」(4日、国立)
初めて4強入りした日本は、2連覇を目指すドイツに0‐3で完敗した。4試合連続ゴール中だったMF田中陽子(19)=INAC神戸=は不発に終わり、後半16分に交代。8日に国立競技場で行われる前回2位のナイジェリアとの3位決定戦で、エースが勝利をもぎ取る。決勝はドイツと、2大会ぶりの優勝を狙う米国の顔合わせとなった。
涙はなかった。ソックスをくるぶしまで下ろし、ベンチで聞いた終了のホイッスル。田中陽は1人、太陽のような笑みを浮かべ、今大会最多の2万8306人の観客に深々と頭を下げた。「自分のせいで…」と泣きじゃくる最年少のセンターバック土光の肩を抱き、「1人のせいじゃない」と激励した。
「予想以上にフィジカルの強さがあって、早い段階で失点してしまった。焦らずやろう!と声を掛け合ったけど。判断よく、幅を使いながら展開する自分の持ち味が出せなかった。もっとプレーしたかったけど…自分の力が足りなかった」‐
前半19分までに3点を失い、主導権を奪われた。20歳以下とは思えない平均身長170・3センチのドイツを相手に、157センチのエースがボールもスペースも自由に操れない。準々決勝までとは明らかに次元の違うサッカーの前にボールタッチの回数は激減。決定的なチャンスを得られぬまま時計の針が進み、後半16分に交代を命ぜられた。
夢は「世界一」と言い続けてきた。一足先に世界を獲(と)ったクラスメートが故郷で声をからしていた。山口市立小郡小学校6年3組の同級生で、現在山口県立大に通うフリークライマー小田桃花さん(18)は、8月にオーストリアで開催されたロッククライミングのW杯で日本人女子として初優勝。小田さんは小学時代の陽子を「太陽のような子」と称する。「昼休みも男の子に交じって、ずっとボールをけっていた」。田中陽も小田さんの活躍を「すごい。頑張ってるのを知ってますよ」と、級友を励みに頂点を目指してきた。
泣かない理由は「まだまだ、もっと成長するために頑張らなきゃいけない。自分の中ではできなさ過ぎて…」と説明した。悲しさよりも、ふがいなさが心を支配した。「ここで終わりじゃない。3位のチャンスがあるので、全力でメダルを獲りにいきたい」。気持ちを切りかえ、前を向いた。陽子の夢は未来に持ち越されたが、やり残した仕事を次のピッチで爆発させる。