INAC神戸無敗連覇「MVPは大野」
「なでしこL、INAC神戸4-1岡山湯郷」(28日、美作)
INAC神戸が岡山湯郷に4‐1で快勝して15勝1分けとし、2試合を残して無敗での2連覇を達成した。日本代表MF沢穂希(34)の良性発作性頭位めまい症や、開幕ダッシュの立役者だったFW京川舞(19)が左膝前十字靱帯(じんたい)を断裂するなど、紆余(うよ)曲折があった中、3シーズンにまたがるリーグ戦無敗記録も35試合に伸ばした。INAC神戸は、11月22日にさいたま市で開幕する国際女子クラブ選手権に、リーグ杯覇者の日テレとともに出場する。
試合終了の瞬間、沢はポンポンと軽く手をたたいた。無敗での連覇にも、選手たちに派手なガッツポーズはなかった。「優勝した実感がなかった。この試合にかけていたので…ちょっと疲れました。ロッカーでは皆で優勝を喜べたし、神戸に帰ったら実感もわくと思います」。まずは、前半戦で唯一引き分けた岡山湯郷に快勝したことに胸を張った。
FW川澄とMF大野が互いのアシストでゴールを決め、前半に2点を先取。後半もFW高瀬が得点王争いを独走する今季19得点目を奪った。そして大野の2点目で、日本代表主将のMF宮間率いる難敵を突き放した。2試合を残し、15勝1分けで勝ち点46。2位日テレを大きく引き離すVだった。
頂点までの道程は順風満帆ではなかった。開幕前の2月に沢が良性発作性頭位めまい症を発症。5月には得点ランクトップの新人、京川が左膝前十字靱帯を断裂するなど不運が襲った。星川監督、大野主将らが3冠を公言していたものの、五輪後のリーグ杯決勝で日テレに敗れた。表彰式では大野が表彰状をピッチに置き悔しさを表現。この行為が一部で批判の的にもなったが、主将の負けん気が常勝チームに危機感を植え付け、再出発の起点になった。
大野は後日、一度だけ日テレ戦を振り返った。「ベレーザの選手はINACに勝って泣いていた。あの気持ちを今の自分たちが持っているかどうか」。星川監督は優勝会見で「マスコミの前ではキャプテンシーを見せないずるい子だけど、ロッカーでは熱いことを言う。僕が選ぶMVPは大野」と賛辞を惜しまなかった。「(浦和)レッズ、ベレーザに勝ってから優勝を実感できる」と大野。黄金時代の幕開けは、無敗で締めくくった後に訪れる。