サンフレ高萩、故郷福島に勇気届けたV
24日にホームでのC大阪戦を制し、クラブ発足20年目で歓喜のJ1初優勝を成し遂げたサンフレッチェ広島。華麗なパスワークと思いきりのいいシュートで攻撃の中心としてチームをけん引したのが、MF高萩洋次郎(26)だ。福島県いわき市の出身で、昨年3月の東日本大震災では実家が被災。いまだ苦しむ故郷への思いも背負い、日本一へ駆け上がった。
震災のつめあとが色濃く残る地元へ、光を届けた。J1初優勝を決めた直後、高萩は「自分は被災地の出身で、震災後もずっと被災地のために何かできないか、勇気を与えたいという気持ちでやってきた。きょうの優勝を見て、少しでも何かを伝えられたら」と、言葉を詰まらせながら話した。
2011年3月11日に発生した東日本大震災。高萩の実家も津波の直撃を受け、祖母は行方不明となった。故郷を一瞬にして奪われ、深く傷つきながらも、強い気持ちでサッカーに集中しようとしてきた。一方でリーグの東北出身者を中心に発足した「東北人魂を持つJ選手の会」に名を連ね、広島に避難してきた被災者への支援などに尽力している。
「自分にはサッカーしかできないから」と話す高萩。だが、遠く福島の地で、広島の試合を見てもらうことは容易ではない。優勝して、全国のニュースに流れれば、被災者の目にも留まるはずだと考えた。
「被災地への思いは、ずっと持っていた。優勝してたくさんの人に知ってもらうことで、何か伝えることができればと思っていた」との言葉通り、高萩の躍動がチームに勢いを付けた。前半17分、自らのパスを相手DFがはじき、そのこぼれ球を豪快に左足でシュート。ゴール右隅に突き刺す先制ゴールで、初優勝を一気に引き寄せた。
「なかなか元には戻らないと思うけど、こういうもので、一歩でも前に進もうという気持ちになってくれれば」と、感極まった表情で思いを吐露した高萩。その目の奥には、隠しきれなかった涙が光っていた。