Jリーガー朴康造がボート選手に転身
Jリーグ神戸のMF朴康造=パク・カンジョ=(32)が今季限りで現役を引退し、ボートレーサーに転向することが27日、分かった。養成所である「やまと学校」(福岡県柳川市・植木通彦校長)の第114期生に合格。来年4月から入学する。14年3月に卒業予定で、同年5月の尼崎ボートレース場でのデビューを目指す。クラブから来季の条件提示があったものの固辞。契約が満了する来年1月31日をもってピッチに別れを告げる。Jリーガーからボートレーサーへの転身。尊敬してやまない元日本代表FW三浦知良(45)=横浜FC=からの激励を胸に、第2の人生を歩み出す。
深緑のピッチから水上へ戦いの舞台を移す。朴が15年のサッカー選手としての現役生活に別れを告げ、ボートレーサーに転向する。
迷いは当然あった。神戸は今季J1で16位に終わり、来季からのJ2降格が決まった。
朴「こういう形で行くのは本意ではなかった。ヴィッセルをJ1に残したかった。サポーター、スポンサーをはじめ、すべての関係者に申し訳ない」
10年にわたり在籍したクラブへの思いがあふれ出る。契約延長のオファーも受けていた。今季20試合に出場。誰もが来季もプレーするものと信じて疑わなかった。
30歳を過ぎ、引退後のセカンドキャリアについて考えるようになった。
朴「体力的にはまだまだいけるけど、どこかで判断しないといけない。ズルズルいきたくなかった」
そんな時、ボートレーサーの魚谷智之、金子龍介と食事を共にする機会があった。ボートレーサーに必要なものとは何か。思わず尋ねてみた。
朴「返ってきた答えが『根性と運動神経』だった。完全に自分の適性と一致している」
心は決まった。前例のない挑戦。だが、これが初めてではなかった。
99年オフに京都を戦力外となり、Kリーグ城南一和に入団した。Jリーグからの移籍は史上初だった。その後は韓国代表にまで上り詰めた。
朴「そういう新しいチャレンジを再びしたいなと。またその舞台があったというのは幸運だった」
尊敬してやまない“キング”の姿も刺激となった。カズは今季フットサル日本代表としてW杯に出場。45歳にしてなお、そのパイオニア精神は衰えることを知らない。
朴「カズさんも常に新しいチャレンジをしている。自分も常々そうしたいと思っていた」
合格の知らせを受ける前、神戸を訪れたカズと会った。引退するかもしれないと打ち明けた。
カズ「応援してるよ。お前が行く道が何であっても、俺たちの関係は変わらない。ボア ソルチ(ポルトガル語で幸運を祈る)」
心が震えた。当初戸惑いを見せていた家族も一緒に合格を喜んでくれた。貴重な戦力を失うことになる安達監督も「頑張れよ」とそっと背中を押してくれた。多くの人に支えられ一歩を踏み出す。背負っているものは決して小さくはない。
朴「自分が成功できれば、体の小さなサッカー選手に新たな選択肢を与えることができる。失敗するわけにはいかない」
退路は断った。切れ長の瞳が強い光を放つ。166センチの小柄な体に大きな覚悟を秘め、船出の時を迎える。