高知商Vは涙が原点 朝練で基礎徹底
「全国高校サッカー選手権大会」(30日開幕)
高知商(高知)が19年ぶり3度目の出場を決めた。チームの“原点”は2年前。県大会決勝の後半ロスタイムに、決勝ゴールを献上して敗れた悔しさを、当時1年生だった選手たちはスタンドで味わった。先輩たちの無念を晴らし、つかみ取った全国切符。強豪・桐光学園(神奈川)と激突する初戦で、選手権初勝利を狙う。
観客席で流した涙が、高知商イレブンをたくましく成長させた。
2年前の県大会決勝。松本一雄監督(44)が「自分が教えた中で最強」と振り返るチームは土佐を相手に奮闘。しかし後半ロスタイムにCKのクリアミスから決勝ゴールを許し、0‐1で惜しくも全国切符を逃した。
MF土居師千(かずち)=3年=は、2歳上の兄・生命(いくや)がピッチで泣き崩れる姿をスタンドから見ていた。「兄は家に帰っても泣いていた。自分も悔しかった」
どうすれば勝てるのか‐。先輩たちの無念を晴らすために後輩たちは話し合い、全員参加で朝練を始めた。
毎日授業前に1時間、リフティングやドリブル、ターンなど基礎練習を徹底。その地道な努力は2年目で花開いた。今夏14年ぶりにインターハイ出場を果たすと、自信をつけた高知商イレブンは安定した戦いぶりで選手権県大会も制した。
4‐1‐4‐1を基本布陣に、縦への速い攻撃が持ち味。屈強な1トップのFW大野兼嗣(3年)がボールを収め、MF井上拓、MF森沢ら2列目の選手が流動的に動いてゴールに迫る。
来年1月2日の初戦は、昨年度大会4強の桐光学園に決まった。中村俊輔(横浜M)や藤本淳吾(名古屋)ら、多くのJリーガーを輩出した強豪だ。
組み合わせ決定後、相手の試合映像を見た。「めちゃくちゃ強い」と松本監督。それでも「意図的に引かず、前からプレッシャーをかけたい」と積極的な戦いを仕掛けるつもりだ。
初出場の第20回大会(1938年度)、前回出場の第73回大会(1994年度)はともに初戦敗退だった。
「桐光学園の守備は強いけど、なんとか崩して勝ちたい。全国に高知商をアピールしたい」とFW大野。強敵から選手権初勝利をもぎ取り、先輩たちに胸を張って報告する。