富山第一初V 大逆転で日本一の父子鷹
「全国高校サッカー選手権・決勝、富山第一3‐2星稜」(13日、国立)
富山第一が延長戦の末、星稜(石川)との北陸決戦を3‐2で制し、富山県勢初優勝を果たした。1‐2の後半ロスタイムに大塚一朗監督(49)の次男、MF翔主将(3年)が同点PKを決め、延長後半9分にMF村井和樹(3年)のボレーシュートで逆転勝ちした。首都圏開催となった1976年度の第55回大会以降、決勝で2点差を逆転したのは史上初。現在の国立競技場を舞台とする最後の大会で、富山第一が“父子鷹”で締めくくった。
監督と選手が父と子に戻った。苦楽を共にした3年間を思い出しながら、人目もはばからず抱き合った。大塚は「お父さんには本当、感謝しかない」と言葉を絞り出した。
3年前、当時コーチだった一朗監督は「しっかりと成長に関わってやりたい」と、息子を入学させた。だが、困難が待ち受けていた。翔が1年生ながら出場した全国高校選手権の県大会決勝で、フリーの決定機を外して出場を逃してしまった。
インターネット上には、父子鷹を中傷する書き込みが相次いだ。「オヤジがコーチだから出ているんだろう」、「コネで試合なんか出やがって」。一朗監督は「30ページ分ぐらいはあった。申し訳ないと思った」と、自分の決断を悔いることもあったという。
この悔しさを残りの2年間の闘争心に変えた。翔は「苦しい時こそ、2年前を思い出して見返すんだと教わりました」。後半ロスタイム3分のPKでは、「外したら、またたたかれるのでは」と両膝をついて祈る監督の前で左隅に決め、成長した姿を見せつけた。
0‐2で迎えた後半42分から追いつき、勢いづいた延長戦で勝ち越し。今季1年を通じて初めてという逆転勝ちで、父子鷹の3年間は出来過ぎな結末を迎えた。
翔は関学大へ進学し、親元を離れる。目標は監督がコーチ留学をしていた際に一緒に生活したイングランドでプレーすることだ。「『あの中でやっている姿を見たい』と言ってくれている。それが夢です」。2人の夢はまだ終わらない。