松山北“美攻賢守”で目指す全国1勝
全国高校サッカー選手権(30日~来年1月12日、埼玉スタジアムほか)に、松山北(愛媛)が5年ぶり4度目の出場を決めた。モットーの「美攻賢守」を発揮して県大会を制し、夏の高校総体に続く全国切符をつかんだ。県内有数の進学校で、全国総体後もチームに残ったMF村上正憲ら4人の3年生が、受験勉強に励みながらパスサッカーをけん引する。31日の初戦の相手は強豪・矢板中央(栃木)に決まった。目標は、埼玉スタジアムが舞台の「4強入り」だ。
「美攻賢守」。松山北イレブンが胸に刻む伝統のモットーだ。同校OBで就任3年目の渡部晃久監督(36)は「パスをつないでテンポよく攻め、クレバーに守る。そういうサッカーを目指しています」と説明する。
第1シードとして臨んだ愛媛県大会。選手たちは、その4文字をピッチの上で存分に表現した。
初戦で昨年覇者・松山商から4ゴールを奪うと、続く準々決勝で南宇和、準決勝で松山工に競り勝った。
済美との決勝では、後半3分に左サイドでパスを受けたMF村上正が相手DFをかわして先制ゴール。鋭い出足でプレスをかける組織的守備は最後まで乱れず、初戦から4試合で22得点を挙げた相手の攻撃をシャットアウト。今夏の全国高校総体に続き、冬の大舞台に立つ権利を得た。
夏の全国総体では大きな手応えをつかんだ。初戦で奈良育英に3-0の完勝。2回戦は帝京三に1-3で敗れたものの、「全国でも自分たちの力は十分に通用したと思う」とDF夏井雄太主将(2年)は振り返る。
ただ、部員の多くが国公立大進学を目指す同校には、他の強豪校とは違う悩みがある。その全国総体を最後に、約30人いた3年生部員のほとんどが受験勉強に専念するため引退。エースストライカーだった選手もチームを離れた。「毎年のことで仕方ないですが、大きく戦力ダウンしました」と渡部監督は話す。
そんな中、チーム残留を選んだ3年生もいる。守護神のGK原田優太、前主将のDF上東嵩史、ボランチのMF藤岡将平、県大会でMVPに輝いたMF村上正憲の4人だ。
勉強との両立は困難なことも多いが、「夏の総体で1勝したことで、また全国で戦いたいという気持ちが強くなった」とGK原田。MF村上正は「大変だけど、うまく時間配分すれば両立できる」と力を込める。固い決意を持って戦う“3年生カルテット”に下級生が融合したチームは、試合ごとに確かな力をつけていった。
5年ぶり4度目の全国選手権。大みそかに行われる1回戦の相手は、09年度に4強入りの経験がある矢板中央に決まった。
松山北は過去3度出場で、まだ勝利がない(初出場の1962年度大会は1回戦で小田原と引き分け。抽選で2回戦進出)。まずは強豪相手に選手権初勝利を挙げ、勢いをつけたい。
その先に、県大会後にイレブンが定めた「4強」の目標がある。
改修工事に入った国立競技場に代わり、今年は埼玉スタジアムが準決勝と決勝の舞台になる。DF上東は「前チームよりパスサッカーのレベルは高い。しっかり戦いたい」と意気込んだ。MF藤岡は「個人では限界があるので、組織で賢く守りたい」。「美攻賢守」を貫き、埼スタを目指す。