松山工50年ぶり全国8強狙う
第94回全国高校サッカー選手権で(30日開幕)に松山工(愛媛)が3年ぶり5度目の大舞台に挑む。重点的に磨いたハードワークを生かし、県大会決勝で9点を挙げるなどダイナミックな攻撃が持ち味。初出場だった1965年度大会でベスト8に進出したが、その後の出場3大会はいずれも初戦敗退。チームの目標は50年ぶりの「8強」だ。
ちょうど50年前。松山工は初出場の全国選手権で2勝を挙げ、8強入りを果たした。今のチームにその栄光を詳しく知る者はいない。それでもDF兵頭俊昭主将(3年)は力を込めて言う。「自分たちが歴史を変えたい」。目指すは半世紀ぶりの白星、そして偉大な先輩たちが到達した「8強」の舞台だ。
持ち味は人とボールがダイナミックに動く攻撃的なサッカー。県大会決勝では帝京五を相手に9ゴールを奪う猛攻を見せつけた。スピード抜群のドリブルを武器に4試合で4得点のエースFW野川稀生(3年)は「夢はプロになること。そのためにも全国選手権では目立ちたい」と燃えている。
悔しさをバネに成長した。新チーム発足から間もない3月の遠征で今大会の大阪代表でもある阪南大高に0-8で大敗。就任4年目の坂本哲也監督(51)は「最初は何もできなかったチームが、地道に努力を重ねてここまできた」と振り返る。
頼もしい指導者も加わった。89年度大会で南宇和の主将として全国制覇を経験し、サンフレッチェ広島などで活躍した元Jリーガーの大西貴氏(44)が、今年1月にコーチに就任した。
大西氏は現役引退後、愛媛FC(当時JFL)監督などを歴任。現在は松山大監督を務めるかたわら、週2~3日のペースで松山工の指導にあたる。
コーチ就任後は坂本監督が植え付けたハードワークを土台に、パススピードと判断力を上げることに力を注いできた。「1年前に比べれば全ての部分で成長した。特に個人戦術が良くなった」と大西コーチ。坂本監督は「大西コーチが基本技術をたたき込んでくれた。選手たちも新たな発見があったと思う」と目を細める。
3年ぶりの全国舞台。松山工は2回戦(来年1月2日)からの登場で、相手は丸岡(福井)に決まった。丸岡とは8月の遠征で練習試合を2試合行い、1勝1敗だった。イメージは悪くない。
ボランチとして攻守のつなぎ役となるMF吉村泰成(3年)は「前からプレスをかけて攻撃的な守備をしたい」。兵頭主将は「全国で戦えるチームになったと思う。タテに速く攻めるサッカーをしたい」と意気込んだ。
そして全国の頂点を知る大西コーチは言う。「ベスト8に入る力はある。あとは緊張する舞台でその力をどれだけ発揮できるか。メンタルな部分がカギになる」。明確な目標を胸に挑む大舞台。50年前の先輩たちに追いつくために、心技体を磨き上げて初戦のピッチに立つ。