浅野が先発起用に応えるジャガー弾!ハリル日本、豪州圧倒でW杯切符
「W杯アジア最終予選、日本2-0オーストラリア」(31日、埼玉スタジアム2002)
W杯ロシア大会アジア最終予選B組の日本代表は31日、さいたま市の埼玉スタジアムでオーストラリア代表に2-0で勝ち、6大会連続6度目の本大会出場を決めた。過去のW杯予選の対戦で白星がなかったライバルを破り、6大陸に分かれた予選でブラジル、イランに次ぐ3番目の突破を決めた。FW浅野拓磨(22)=シュツットガルト=が前半41分に鮮やかな先制ゴールを決めた。W杯ロシア大会は32チームが参加して来年6月14日開幕。12月1日にモスクワで1次リーグの組み合わせ抽選が行われる。
若き野獣がW杯への扉をこじ開けた。均衡を破った浅野の先制弾は、昨年9月の最終予選タイ戦以来となる自身代表通算3得点目。両手を顔の横で爪立てるおなじみの“ジャガーポーズ”で埼玉の夜空に向かってほえた。
「ここで決めてヒーローになるんだ」。左足に決意を込めた。0-0で迎えた前半41分、左サイドから長友がオーストラリアDFの裏へクロスを送る。「常に狙っていた」と紙一重のタイミングでオフサイドラインをかいくぐった浅野は、「最高のボールが来たので合わせるだけ」と浮かさぬように、丁寧に、左足で流し込んだ。
決戦前夜のミーティングでハリルホジッチ監督から右FWの先発を言い渡され、「今までにないくらい緊張した」。前半16分と同35分のヘディングはいずれも枠を捉えられなかったが、3度目に巡って来た“獲物”を、ゴールに飢えた野獣が逃すはずはなかった。
苦い涙を成長の糧とした。代表初先発を飾った昨年6月のキリン杯ボスニア・ヘルツェゴビナ戦。1-2とリードを許した終了間際に、GKと1対1の決定機でパスを選択。敗れた試合後に「消極的な部分が出た」と悔し涙を流し、本田からは「泣く選手の気持ちが分からない」と突き放された。だが、大一番で「いつまでも上の人に頼っていたら駄目」と強い自覚で世代交代のうねりを起こした。
13年にJ1広島へ入団。スカウト時代に浅野を獲得した足立修強化部長は獲得の決め手となった言葉を振り返る。「僕はプロになってご飯を食べていかないといけない。家族を養っていかないといけない」。にきび跡の残る少年は鬼気迫る表情で語り掛けた。絶対的エースだった佐藤寿人(現名古屋)の後継者となり、ユースから昇格する野津田岳人(現仙台)の競争相手にもなり得る人材を探していた足立氏は「あいつは『昭和のボクサー』だ」と、浅野の覚悟に惚れ込んだ。
16年に移籍したアーセナルから当時2部シュツットガルトに期限付き移籍。ドイツで2季目を迎えた。個別でテクニック系のトレーニングを積むことで「落ち着きも出てきた」と成長を実感する。この日は実家のある三重県菰野町から両親と妹が観戦に訪れていた。大切な家族の前で感謝と恩返しのゴールを贈った。「まだスタート地点に立っただけ」と話すように、自身のW杯出場が約束されたわけではない。ロシアの地にたどり着く日まで、浅野はピッチを駆け続ける。