【長友独占手記】代表引退考えたブラジル大会…ロシアを集大成に
「W杯アジア最終予選、日本2-0オーストラリア」(31日、埼玉スタジアム2002)
日本代表が6大会連続6度目の本大会出場を決めた。過去のW杯予選の対戦で白星がなかったオーストラリアを破り、6大陸に分かれた予選でブラジル、イランに次ぐ3番目の突破。見事なクロスで先制点を呼び込んだDF長友佑都(30)=インテル・ミラノ=は、デイリースポーツに寄せた手記で自身3度目となるW杯に向けた思いを語った。
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【長友独占手記】
3回目のW杯出場決定だけど、今回が一番うれしい。何なんだろうな、この気持ち。今日は魂を込めて戦う、それだけだった。
3年前のW杯ブラジル大会。敗退が決まってキャンプ地に戻り、大会最後の取材を受けていたら、自然と涙が流れていた。日本チームは本当にベスト4や優勝を狙えるチームだと思っていた。圭佑はACミラン、真司はマンチェスター・U、そして僕はインテルに所属していて、海外で活躍している選手も多くそろっていた。そのチームがあれだけ死に物狂いになって、4年間かけて準備を重ねて臨んだW杯があっけなく終わってしまった事への空虚感が涙を流させたのかもしれない。
そこから、ロシア大会へと気持ちを切り替えるのは本当に難しかった。実は、ブラジル大会後には代表引退を考えていた。それほど空虚感に満ちていた。ブラジル大会にかけていた分、同じエネルギーでこれから4年間努力を続ける事ができる自信が持てなかった。
でもインテルでの試合は次から次へと過ぎていくし、結局は自分のやらなければいけない事、やるべき事をやるだけだといつしか気付いた。
僕には応援してくれる人、支えてくれる仲間がいる。ブラジルで自分が味わった空虚感や寂しさは決して僕だけが感じた訳ではなく、応援してくれていたサポーターや関係者も同じような空虚感を味わったんだと。じゃあ自分にできる事は何か。誰よりもピッチを駆け回る姿を見せる事だと。そこからは自然と次のW杯への思いも強くなっていった。
新体制で臨んだ15年のアジア杯で強く感じた事があった。絶対的優勝候補ながら自分も負傷し、結果もベスト8。申し訳ない、悔しいという思いと同時に「日本がW杯に出られて当たり前の時代は終わった」と感じた。アジアのレベルが上がり、この後のW杯予選は非常に厳しいものになると予感していた。
ロシアW杯のメンバーに入れれば、僕にとって3大会目のW杯となる。30代で迎えるW杯は特別なものになる。(中村)俊さんや闘莉王さんに引っ張られて、訳も分からず無我夢中で走り抜けた南アフリカ大会。その経験を踏まえ海外でプレーして優勝を目指し、自信を持って臨み無残に散ったブラジル大会。今回のロシア大会は僕の集大成となる大会になると思う。
31歳という年齢でW杯を迎える。長谷部さんのサポートだけでなく、若手が100%のパフォーマンスを発揮できるように、環境を整える事ができればいい。つまり、南アフリカの時の僕にとっての、俊さんや闘莉王さんのような存在でありたい。そして僕の原点である守備、1対1の局面で貢献したい。
そして家族が増えた事もありますが、支えてくれる多くの人に、感謝の気持ちを今まで以上に強く胸に抱きながらプレーしたい。ブラジルでは僕自身も、サポーターの皆さんにも空虚感や寂しさを感じさせてしまった。今度は共に勝利をつかみ取って、共に喜び合える、そんな大会にしたい。(インテル・ミラノ所属、日本代表DF)