神戸・咲花フィジカルコーチ 欧州選手との違いは“一歩目のパワー”

 今季からJ1神戸のフィジカルコーチに就任した咲花正弥氏(43)。ドイツ代表と米国代表のスタッフとして10年南アフリカ、14年ブラジルW杯に2大会連続で参戦した経歴を持つ、“世界を知る”日本人の一人だ。アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)出場権獲得を目標に掲げる港町クラブに加わった“大物助っ人”。昨季は負傷者が相次いだこともあり9位に沈んだ神戸で、フィジカル改革を引き起こそうとしている。

 17年間、米国やドイツを渡り歩いた咲花氏の目には、欧米人と日本人のフィジカル差はどのように映っているのか。「正直、そういう比較はあまりできない」と意外な答えが返ってきた。

 「生まれ持った体格や人種などの影響はある」と前置きした上で、「米国代表はこういうフィジカル、ドイツ代表はこういうフィジカルと一概に言うのは難しい。個々の集まりなので、どの国にもそれぞれの長所と短所がある。例えばポドルスキの筋力や体のバランスが特別に秀でていて、日本人が劣っているというわけでもない」と説明する。

 咲花氏は09年から10年まで日本代表のフィジカルコンディショニングアドバイザーも務めた。岡田武史監督の要望もあり、体幹の強さや体のバランスなどを測定、評価する役割を担った中で「実績ある日本人選手は体幹がしっかりしていて、欧米に比べても数値が良かった。思ったより体の使い方が上手な選手が多かった」と当時の印象を振り返った。

 単純な筋力などより咲花氏が着目するのは、欧州選手の“一歩目のパワー”だという。「パスを出してから動き出す『パス&ゴー』で、ポドルスキを含む欧州の選手は一歩目からマックスで加速する習慣が身に付いている」。ただ、そういった動きは日本人でもトレーニングによって身に付くといい、沖縄キャンプでも動き出す際の正しい前傾姿勢や地面にしっかりと力を伝えて前に出る脚の運び方などを指導した。

 咲花氏がフィジカルコーチとして参加した14年ブラジルW杯で米国代表はガーナ、ポルトガル、ドイツと同組となる“死の組”を突破しベスト16に進出した。決勝トーナメント1回戦のベルギー戦で力尽きたが、4試合を終えた時点で参加国最長クラスとなる約1万6千キロに及んだ総移動距離でも走り負けないフィジカルに世界が目を見張った。それでも咲花氏は「走り負けないことだけで(勝敗が)片付かないことも悟った」という。

 米国代表のクリンスマン監督が最も重視したのが「ケミストリー」で、咲花氏は「チームの一体感のようなもの」と言い換えた。例えば「チーム内に形成されたグループ同士を引き寄せてくれる存在」を考慮したメンバー選考を行うなど、指揮官はコンディショニング以外にもピッチ外の多岐にわたって気を配ったという。W杯における立ち位置が似通っている日本と米国。ロシアW杯で日本代表はどのような「ケミストリー」を見せてくれるのだろうか。

  ◇  ◇

 咲花正弥(さきはな・まさや)1974年6月13日、東京都練馬区出身。東京・自由学園大卒業後、光学機器メーカー「オリンパス」で3年半勤務。2003年に米ニューヨーク州のイサカカレッジ大学院で運動生理学の修士課程を修了し、アスリーツ・パフォーマンスで勤務。08年から10年までドイツ代表のフィジカルコーチ、09年から10年には日本代表フィジカルコンディショニングアドバイザー。11年から米国代表のフィジカルコーチを務め、18年からJ1神戸のフィジカルコーチに就任した。

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