GK川口能活、涙こらえ引退会見「もう一度サッカーをやるとしてもキーパーを」
今季限りでの現役引退するサッカー元日本代表、J3相模原のGK川口能活(43)が14日、相模原市役所で引退会見を行った。アトランタ五輪でブラジル代表に勝利した「マイアミの奇跡」、W杯4大会連続メンバー入り、00年と04年のアジア杯優勝、A代表出場116試合といった数々の金字塔を打ち立てた日本の守護神は、時折、こみ上げる思いを飲み込みながら、「もう一度サッカーをやるとしてもキーパーをやると思います」と言い切った。
やや緊張した面持ちで登壇した川口は「今シーズンで引退することを決めました。今は感謝の気持ちしかありません」と心境を語った。会見前に100人を超える報道陣が集まった会場の写真を見て涙していたといい、「僕のためにこれだけのみなさんが集まってくれたことに、本当に感謝の気持ちしかありません」と少し声をうわずらせて感謝した。
「実は、この1年、2年ぐらいですね。プレーを続けるか、引退するか。その狭間で揺れていました」という葛藤があったと明かした。引退を決意したきっかけはロシアW杯や各年代別代表の戦いぶりを見たことだった。「僕が代表でプレーしていた時よりも、上のレベルというかね。世界で戦える日本サッカーになってきていると思ったんです。その状況の中で、また違った形で貢献したいなと。日本サッカーに自分は選手としてではなくて、違った形で貢献したいという思いが強くなって。それで、引退する覚悟を決めました」と明かした。
今季のリーグ戦出場は5試合にとどまっている。「体はすごく元気なので。完全燃焼したかといえば、まだ余力はあるんですけど」と、体はまだ動く状態にあるとはしながらも、「悔いはないし、自分が常にピッチ上で、あるいはピッチ外でベストを尽くしてきて、そしてこの決断にいたったので。まあ、後悔はしていませんし、次のステップに行くという強い意志はあります」と断言した。
自身が驚いた好セーブにはアトランタ五輪でロベルトカルロスの強烈なシュートをキャッチした時、そしてドイツW杯のブラジル戦でジュニーニョペルナンブカーノのシュートを指1本で触ったことを挙げた。理想のGK像は「ゴールマウスをしっかり守ることを前提の上、より攻撃的に、広い守備範囲の、そこがベースになって。攻撃的なフィード、常に攻撃の第一歩としてプレーする。広い守備範囲でゴールを守る。失敗を恐れない。それが自分の理想のゴールキーパーと思います」と語った。
また、もう一度サッカー人生を歩むとしたら、という質問には「もう一度キーパーですね。やっぱり、大変なこともありましたけど、キーパーの練習が好きでしたし、最初に見てキーパーがかっこいいなと思いましたから。もう一度サッカーをやるとしてもキーパーをやると思います」と言い切った。
今後は「やはり現場で、指導者として、自分の経験したことを伝えたいし、自分も指導者として、サッカーは常に進化していますから、そのための勉強をこれからもしていきたい。指導者になるための歩みをしっかりと始めたいと思っています」と自身に続く名GKを育てることを誓った。
川口は清水商高から横浜Mに94年に加入。95年に定位置をつかみ、以後、横浜Mの中心選手として活躍した。01年にはイングランド2部相当のポーツマスに加入。日本人GKとしては主要リーグの国・地域への欧州移籍は初めてのことだった。03年にはデンマークのノアシェランに渡った。05年にJリーグに復帰し磐田に加入。14年に岐阜、16年に相模原へ移籍した。JリーグではJ1に421試合、J2に43試合、J3に42試合出場している。