【森保監督インタビュー2】すべてを出し切る-これが指揮官の哲学
サッカー日本代表と、東京五輪代表チームを兼任する森保一監督(50)がインタビューに応じた。2019年は1月のアジア杯を皮切りに、南米選手権、カタールW杯アジア予選など重要な試合がめじろ押し。ロシアW杯終了後に誕生した、日本人としては初の兼任監督にとって、東京五輪本大会の前年でもあり、重要な一年。指揮官の声を3回に分けてお届けする。第2回は“監督・森保一”を作ってきた経緯、そして哲学について。
-兼任監督として、経験豊富な選手から若手への好影響を期待している森保監督だが、自身が影響を受けたベテラン選手と、その内容は?
「影響を受けた選手は、やっぱり風間さんが、影響を受けた選手ですね。風間さんがドイツから帰ってきて、その当時の日本リーグの2部だったマツダに移籍してきてくれて。色んなことを教えてもらった。海外でやってきた経験をもっていて、すでに代表にも入っていた。そういう選手から厳しく言われたこと、正しいことを言われたことが、自分の成長につながっていったかなと思います」
-例えばどんな経験をしたのか。
「練習や試合の中でミスしたら『そんなへたくそとは一緒にサッカーはしたくない』って言われたこともあります。そういう中で自分もうまくなってやろう、風間さんに挑んでいこう、いうエネルギーがわき上がってくる。やり返してやろうと思って挑んでいったら必ずかわされていましたけど。でもピッチ内ですごく厳しいが、部屋では色んな話をしてもらった。当時は2人部屋がほとんどで、風間さんが部屋長で僕が部屋っ子というのが多かった。ピッチ外で、いろいろ食事に呼んでもらったことも大きかったですね。すごく影響を受けています」
-日々、選手と接することができるクラブ監督と、限られた時間しかない代表監督となると、チームとして考え方とか変わったところは。それとも根底は変わらないか。
「両方ともあります。根底は変わらないです。それは考え方は、チームの勝利のために、結果を出すために、全てをやっていくということ。チームファーストとプレイヤーズファーストということはクラブであっても代表であっても変わりはないです。ただ、チーム作りにかける時間、もてる時間が違うというのはあるので、そこで何をしなければいけないかというのは、工夫していかなければいけないと思います。でも思いとかというのは、全く根底は変わらないですね」
-監督として怒ること、許せないことなどは?
「チームのために戦わないというところ、局面で戦わないという部分は…。球際の攻防で腰が引けてる選手とか、そこをプレーしないというか、やらない選手には指摘します。怒るかどうかは分かりませんが。直近で言うと(五輪世代の)アジア大会のベトナム戦。ハーフタイムに0-1で負けてる状況で、前半、なすすべなく、リードされている状況の時に、ハーフタイムで球際のところで戦えてないのではないか、自分たちは戦う姿勢でプレーできてないのではと選手には強く主張、厳しく言いました。試合が終わった後、出し切ったと言えるかどうか。勝負の世界なので負けることはある。ただ負けるにしても自分たちを出し切って負けるとか、できる限り抵抗をして結果として負けたというのなら全く問題ないですけど。終わった後に反省ではなく後悔が出てくるようなことは、ないほうがいいなと」
-やり切る、出し切ることを常に大事にしている。過去にそういう体験があったのか。
「私自身は結構、サボる、楽するところは楽するみたいなところはあります。ただ、選手時代には手を抜くとか、これくらいでいいだろうというので、この世界で生きていけるような選手ではなかった。自分のことを出し切ってがむしゃらにやって全部ぶつけて生き残れる、そういう選手だった。人によっては、全部出し切ってやるよりもちょっと余力を残した方が自然体でリラックスして動けるという選手もいると思います。ただ自分は、選手時代の経験からチームで生き抜いていくためにそういう思いでやっていたので」
-全力を出し尽くすことを選手の時から意識をしていた。
「もちろん指導者の方の見方にもよるのですが、実力が足りないと言われるのは全然大丈夫なんですけど、そこでやり切ってないとか言われることは絶対なしにしようと思いながらやってました。一度だけ、引退の2年前かな。(当時・仙台の監督の)清水さんに『何で走らないんだ?』と言われたことがあって。その時は自分でも明らかにサボっていた自分がいた。あっ、ここは抜いてもいいかな、と思った自分を見透かされていて、その1回だけ凄く覚えてます。あとはそんなに言われたことがないんですが…と思っていたらすぐ引退でした(苦笑)」