株式会社メルカリ（以下、メルカリ）と日本製鉄株式会社（以下、日本製鉄）は３０日、日本製鉄およびその子会社が保有するサッカーのＪ１鹿島の発行済株式７２・５％のうち、６１・６％を約１６億円でメルカリに譲渡する、株式譲渡契約を締結したと発表した。この日、Ｊリーグ理事会でも承認された。経営権を取得したメルカリは、日本製鉄、鹿島と会見し、クラブの伝統と哲学は継承しながら経営強化を進める考えを示した。

　Ｊリーグ史を形作ってきた屈指の名門が、新たな時代に向けて、大きな変革の時を迎えたのかもしれない。鹿島の経営権を取得したメルカリの小泉文明社長（３８）は同社とクラブ、地域の強みを生かし「三位一体でやっていく」と話した。

　同じＩＴ大手・楽天がオーナー企業となった神戸と比較する声には「（Ｊリーグ発足以降、２０個のタイトルを獲得してきた）チーム強化の伝統は大事にしたい」と強化部門に“口は出さない”方針。「テクノロジーの部分で変革して、真のグローバルクラブにしたい」とし、今後は同社の決済サービス「メルペイ」を用いたスタジアムのキャッシュレス化などを進めていく。

　鹿島の前身である住友金属サッカー部の創設以降、半世紀以上もクラブの運営母体であり続けた日本製鉄。共同会見に出席した同社の津加執行役員は、株式の譲渡後も第２位（１１・０％）の株主であると強調し「ＤＡＺＮが入ってきて、共存から競争へと変わった。プロスポーツ団体として、ビジネスの収益を上げていくことが大事。企業スポーツとは違ってくる。鹿島が勝ち続けるために経営基盤の強化、クラブ価値の向上のため新たなパートナーを迎えることはわれわれにもプラス」。時代の変化と共に、経営の形態を変えていくと説明した。

　Ｊ屈指の強豪と、２０１３年創業で勢いのある新興ベンチャーとの“コラボ”が作る新たなＪクラブ像へ注目が集まる。