久保建英に息づくスペインの流儀 仲間との信頼築いた力とは

 サッカーのスペイン1部レアル・マドリードからビリャレアルに期限付き移籍した日本代表MF久保建英(19)が、現地時間13日(日本時間14日)のウエスカ戦で2020-21シーズンの開幕を迎える。昨季は期限付き移籍した同1部マジョルカで奮闘。そんな1年間を間近で取材してきたマジョルカ島在住のデイリースポーツ通信員・島田徹氏が特別コラムとして、久保のコミュニケーション能力の高さ、今季への期待をつづった。

  ◇  ◇

 マジョルカでプレーした昨シーズン。練習の前後やウオーミングアップの際に、チームメートに積極的に声を掛けにいく久保の姿を何度も目にした。

 同じ攻撃的MFのフェバスと話し込んだり、36歳のMFセビージャ、38歳のDFカンポスといった年長者にも尻込みすることなく自然体で接していた。元コロンビア代表FWエルナンデスとはサッカー以外の話をするなどして気が合うところをみせた。

 スペイン語圏の選手だけではない。同じ時期に入団したフランス人MFサリブル、ガーナ代表MFババ・ラーマンと笑顔を見せたり、クロアチア人FWブディミールら東欧勢にも溶け込んでいた。マジョルカの練習場はロッカールームから200メートルぐらい離れているが、久保がその間を1人で歩いているのを見たことがない。スペイン語だけではなく英語など複数の言語を使い、常に自分がイニシアチブを取りながら交流を深めていた。

 「久保は11歳からバルセロナで5年を過ごしているからスペイン語ができて当然」と思われる向きもあるだろう。実際、会見でも流ちょうに言葉を操るし、日本語と同等のレベルで外国語を話せるという意味では、これまでに海外挑戦した日本人選手の中でトップかもしれない。

 久保を語る上で、語学力は確かに重要な要素だ。でも同時に、全てでもないのだろうと僕は考えている。

 スペインの人たちは自分の存在を示し、自らの考えを主張し続ける。ときには相手をねじ伏せるような押しの強さも見せる。そうして仲間との距離を近く保つことで信頼関係を築き、さらに深めていく。こちらで幼少期を過ごした久保はそんな「流儀」を理解し、しっかりと体現している。言葉を話せること以上に、これは大きな強みだと思う。

 昨季序盤は途中出場や出番がない試合が続いたが、シーズンが進むにつれて出場機会が増え、最終的にリーグ戦35試合に出場し、4得点、4アシストを記録した。スペイン1部というトップリーグでの最初の「試験」は問題なくクリアしたと言っていい。

 新たに用意された舞台は昨季リーグ5位で、欧州リーグ(EL)の出場権も得ているビリャレアル。ここではより高い目標と結果が求められる。

 スペインなど各国代表選手が複数いる中で、選手1人1人のプライドや競争意識、結果へのこだわりが高くなるのは想像に難くない。その中で自分をどう表現するのか、仲間とどう共存するのか-。ピッチでのパフォーマンスと並行して、人間的な幅や平常心を保ち続けるタフさを問われることになる。

 階段を登るように難易度を増すテストはレアル・マドリードへの凱旋を一つの到達点として見据えながら続いていく。マジョルカよりもレベルの高い新天地でどんな姿を見せてくれるのか。期待を持って見守りたい。

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