攻撃一辺倒だったJ1広島レアンドロペレイラの意識を変えた鳥栖戦
百聞は一見にしかずということわざは、中国の歴史書「漢書」に登場する。漢は漫画「キングダム」後の時代に登場する中国の王朝で今から約2200年前に成立。そんな昔の言葉が今も残っている。真実の証明である。
サンフレッチェの主砲・レアンドロペレイラにとっても、その言葉は真実として胸に刺さっているはずだ。
10月3日、対鳥栖戦。
城福浩監督はレアンドロをはじめとするブラジル人選手を先発から外した。違いがつくれるはずの彼らを外して果たして攻撃をつくれるのかという心配をよそに、広島の日本人選手たちは躍動。強烈な前からのプレスを実践し、3-0で快勝した。
レアンドロはわずか5分間の出場。決定機を一つつくったが、成果はそれだけ。試合後、プレー時間の少なさに不満を見せていたが、広島が前半から見せた圧倒的な内容と3得点という結果の前に、それ以上の主張は難しい。
レアンドロはずっと城福浩監督と話し合い、指揮官が求めていることを自分なりに咀嚼(そしゃく)しようと努力した。しかし、ピッチに立つと自分の身体に染みついた習慣が抜けない。前からのプレスは連続性に欠け、結局は攻撃に専念しがちになる。
「監督のサッカーに従って、点を取る」
言葉では何度もそう言っていたし、やろうという意識も存在した。しかし、それがどうしても表現できなかった。
しかし、まさに百聞は一見にしかず。目の前で見せ付けられた鳥栖戦のサッカーは、エースを変えた。
永井龍が見せた迫力のあるプレスほどではないが、何度も何度も前に走り、相手に圧力を掛け続けた。かわされれば後ろに戻り、ブロックをつくって堅牢(けんろう)な守備に貢献。その上で、ゴールを狙う貪欲さを失わない。
「非常に近しい親族の不幸」のため、城福監督が試合を休まざるをえなかった神戸戦(10月18日)で決勝ゴールを決めたレアンドロペレイラは「監督のために」と口にした。成長を導いてくれた指揮官に対するせめてもの感謝だった。(紫熊倶楽部・中野和也)
◆レアンドロペレイラ 91年7月13日生まれ。ブラジル出身。ポジションはFW。身長190センチ、体重76キロ。背番号39。11年にプロ入りし、ブラジル、ベルギーのクラブを渡り歩き、19年1月に松本に加入。同年8月に広島に期限付き移籍した。19年は広島でJリーグ9試合に出場し4得点。今季は22試合に出場し12得点(11月6日現在)