鈴木武蔵 いじめ問題で第三者ができることは 高校生質問に「雰囲気に流されないこと」
ベルギー1部ベールスホットに所属する日本代表FW鈴木武蔵(27)が3日、新潟明訓高サッカー部に向けたオンライン講演会を行った。自身がプロのキャリアを歩み出した新潟にある同校サッカー部の部員84人、マネジャー4人、スタッフ4人の計92人が参加し、生徒からの質問に鈴木が答える形で進められ、3月に出版した自伝「ムサシと武蔵」(徳間書店)の共著者である安藤隆人氏と共に約2時間にわたって生徒たちとの交流を深めた。
鈴木は昨夏にJ1札幌からベールスホットに完全移籍。リーグ戦26試合6得点で移籍1年目のシーズンを終えた。チームに溶け込んだ方法を問われた鈴木は「点を取ったことと、ロッカールームで全力で『江南(カンナム)スタイル』を歌って踊ったことで、一気にみんなが心を開いてくれた」と明かした。
当初は「あまり受け入れてもらえていない雰囲気があった」と振り返ったが、韓国の人気歌手PSY(サイ)のヒット曲を披露したことで「チームメイトの中で『江南スタイル』が大流行して、1週間経った時にチームメイトから『お前のせいでずっと江南スタイルが頭の中に流れているよ(笑)』と言われましたね」とエピソードを語った。
自著「ムサシと武蔵」では、幼少期に肌の色によるいじめや差別を受けたことにも触れている。「差別を受けている人に対して、第三者の人間ができることはありますか」と質問された鈴木は、真剣な表情を浮かべて「加担しないこと、そしてその場に流されないことが大事だと思います」と答えた。
「いじめには必ずそこには主犯格がいるんです。周りの人たちはその主犯格に流されているだけなんです」とし、「周りの雰囲気に流されない。自分が『違う』と思ったら加担しないし、守ってあげられる方法はいくつかあると思うんです。そういう行動を取れる人が、サッカーだけじゃなく、いろんな社会でも立派な人間になれる人だと思っています」と生徒たちに説いた。
さらに鈴木は「自己肯定感」の大切さについても強調した。「悩んでいる時とか、苦しんでいる時ってどうしても自己肯定感が低くなって、自己否定が多くなるんです。僕もずっと肌の色が黒いことで自分を否定し続けた。でも、それって絶対に変えることが出来ない事実なんですよ。色が白くなりたいと思って、いろんなことをした。でも白くなれるわけがないんです。どんなに否定しても嫌がっても変えられない事実がある。大事なのはそれを受け入れて、『それも自分なんだ』と自己肯定をしていかないといけないんです。自分が自分の可能性を信じてあげないと、視界は開けない。自己肯定を増やしていって欲しいし、周りがそれに気づかせてあげて欲しい」と優しく語りかけた。
5月6日午後8時からは「ムサシと武蔵」刊行記念として「武蔵ナイト vol.2」(主催HIS、徳間書店、Hokkaido Dream)が開催される。第2弾は「新潟ナイト」として新潟時代の盟友でもあるDF早川史哉とのオンライントークイベントが行われる予定。詳細は株式会社エイチ・アイ・エス スポーツ事業部(sports@his-world.com)まで。