J1広島 ハイネルが帰ってきた 右膝手術、恐怖に耐えて6カ月半ぶり
一時は歩くことすら辛かったJ1広島のMFハイネルが、今は笑顔で走っている。最大のメリットであるスピードも復活しつつあり、100%の力で蹴っても痛みがない。
「それが本当に大切」
笑顔の言葉。それが彼の現状を物語る。
以前から抱えていた右膝の痛みが悪化したのは昨年の夏。普段の生活に影響するほどの激痛が走った。11月20日、ブラジルに帰国。現地で手術を受けた。
「自分はこれからどうなっていくのか。元に戻れるのだろうか」
腫れがひかない膝を抱え、恐怖に苛(さいな)まれた。
スポーツ選手にとって身体にメスを入れることは、それだけで不安だ。手術した部位が元の状態に戻るか、絶対の保証はない。リハビリがうまくいかず、自分のプレーを取り戻せなくなった例もある。
それでもハイネルは、自分の未来を信じて手術に臨んだ。結果は成功。膝の腫れはひき、痛みも薄れた。「元に戻れるのでは」と前向きになれた。
年明け早々に日本へと向かい、キャンプ初日から参加。ボールを蹴りたい気持ちをグッとこらえ、リハビリに集中した。サッカーのことになると時に感情があらわになり、城福浩監督にも食ってかかっていた激情家のハイネルが厳しいリハビリに耐え抜く姿からは、彼の復帰にかける断固たる決意が見えた。
4月10日、対湘南戦で6カ月半ぶりに復帰。59分と復帰初戦にしては長い時間のプレーとなったが、試合後の痛みはない。あとは、自分のプレーを試合の中で取り戻すだけだ。
「あれほど長い離脱の後ですし、ハイネルの状態については常にチェックしています」と城福監督は慎重。一方で「ゲーム感覚は慣れてきているし、やりながら体力をつけていく段階にきている」と手応えも感じている。
ハイプレスにチャレンジしている今季の広島にとって、ハイネルの強度の高さと速さは貴重。19年、広島デビューとなった浦和戦でいきなりゴールを叩き込んだ破壊力が復活すれば、それだけでチームを救ってくれる。
(紫熊倶楽部・中野和也)
ハイネル 1990年9月5日生まれ。ブラジル出身。ポジションはMF。172センチ、68キロ。背番号27。09年にプロ生活をスタート。ブラジルのクラブを渡り歩き、17年はJ1川崎でプレー。18年は再びブラジルのクラブでプレーし、19年に広島に期限付き移籍した。昨季まで3年間のJ1通算成績は56試合出場で3得点。今季は5試合に出場し0得点(5月7日現在)