開幕戦ゴールの広島レジーナFW中嶋淑乃は魔法のようなドリブルの使い手
前をふさいでもすり抜けられ、外に追い込んでもいつのまにか内側に切り込まれる。彼女のドリブルは、まさに魔法。使い手はサンフレッチェ広島レジーナの11番、中嶋淑乃だ。
9月12日、日本初のプロ女子サッカーリーグ「WEリーグ」の開幕戦で歴史的な初勝利を挙げたレジーナの特長は、なんといってもサイド攻撃。1得点2アシストを挙げた元日本代表のプレーメーカー・増矢理花の多彩なパスを軸に、右の立花葉、左の中嶋が強烈な突破からチャンスをつくるのがレジーナの方程式だ。
その方程式が見事にはまったのが開始早々の連続ゴール。特に中嶋のクロスから増矢が決めた2点目は白眉だった。中嶋の緩急の利いたドリブルはサイドバックを翻弄し、CBも引き出してゴール前のスペースを創出。増矢の飛び込みも狙いどおりで、組織としての攻撃プランと中嶋の個人技がベストマッチしたゴールだった。
年代別代表の経験もなく、全国的にはほぼ無名の選手と言っていい。しかし彼女のドリブルには、森島司(広島)や三笘薫(サンジロワーズ)のような「とれそうでとれない」魔力に満ちていた。こんな人材がいたんだ。初めて彼女のプレーを見た時、驚きを隠せなかった。
さらに彼女を輝かせるのは、シュート力の高さだ。開幕戦の彼女のゴールはその証明だ。増矢のスルーパスを呼び込む運動量と感覚の鋭さ。DFを置き去りにする素晴らしいスピード。GKの手を弾いてゴールに叩き込む右足の強さ。昨年、なでしこ2部リーグで得点王に輝いた破壊力を開幕戦で強烈に見せ付けた。
太陽の下で練習しても白い肌を保つなど美容への関心は高く、ファッションも大好き。ピッチ外ではちょっと天然なところもある可憐(かれん)な女性。しかし、スパイクの靴ひもを締め、前髪をヘアバンドでまとめれば、魔法のようなドリブルを持つ妖獣に変身する。そんな中嶋淑乃の存在に気づけばきっと、彼女の魔力に魅了されるはずだ。
(紫熊倶楽部・中野和也)
◆中嶋淑乃(なかしま・よしの)1999年7月27日生まれ。熊本県出身。ポジションはFW、背番号11。161センチ、48キロ。小学3年の時にサッカーを始め、東海大付熊本星翔高を経て18年にオルカ鴨川FCに入団。昨季、18試合で11得点でなでしこ2部リーグ得点王に輝く。今季、サンフレッチェ広島レジーナに加入した。