【福西崇史 熱血EYE】三笘の活躍は収穫だが得点力不足の課題は残ったまま 求められるピッチ内の対応力
「W杯アジア最終予選、オマーン0-1日本」(16日、マスカット)
日本は敵地でオマーンを下し、4勝2敗の勝ち点12とした。後半36分にMF三笘薫(24)=サンジロワーズ=のクロスをMF伊東純也(28)=ゲンク=が左足で押し込んだ。日本は勝ち点11のオーストラリアを上回り2位に浮上した。首位は同16のサウジアラビア。
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後半から三笘が入り、開始30秒でドリブルを仕掛けてファウルをもらった。これが大きかった。あのプレーで相手守備は2人、3人と三笘に引きつけられる形になった。その後は縦の突破だけでなく横にパスを出すなどして、統率がとれていた相手の守備陣形を崩す要因の一つになった。
最初のプレーでいきなり、あのドリブルを仕掛けられるのは三笘の状態がいい証拠。とてもA代表初出場とは思えない、何試合もプレーしているかのような堂々とした動きだった。見たかった選手の一人だし、サポーターもそうだったと思う。次は代表のスタメンを奪えるか。そんな期待を抱かせてくれた。
日本は11月の2試合をいずれも勝利して勝ち点6を得られたのは大きい。オーストラリアを順位で上回り、最終予選2位突破も見えてきた。ただし、得点力不足という大きな課題は残ったままだ。
問題は相手を崩せる選手がいないこと。それはパスの出し手にも受け手にも言える。前半、大迫が中央で受けようとする動きがあったが、中盤から大迫にパスが出ず、ボールを後ろに下げてしまった。柴崎も田中も、そういう場面で大迫に当てて前に出る、という動きをしないと攻撃のスイッチが入らない。後半、遠藤がまず守備ラインに近づいてパス交換し、そこから中央を縦に上がっていく場面があったが、相手は守りづらそうだった。
その意味で後半は、三笘の起用と同時に、南野が中央寄りに位置したのが奏功した。中盤に遠藤、田中、南野と縦の位置関係ができたことも、相手の守備にずれを生じさせる要因になった。
結果的にシステム変更で状況は好転したが、理想はピッチ上の選手自身による判断だ。例えば攻め手がなかった前半、攻撃時に田中が中央に入る形になってもよかった。ベトナム戦では左の守田にそんな動きがあった。
相手がどう守ってくるかは実際に戦ってみないとわからないので、試合に出ている選手が相手の嫌がるポジションを見つけるなどの、柔軟なプレーが必要になる。強いチームにはそれができる。
工夫、対応力がないとチャンスは生まれないしチャンスが増えれば、必ず得点も増える。1月のホーム2連戦ではそんな内容も求めたい。(02年日韓、06年ドイツW杯日本代表=デイリースポーツ評論家)