J1広島・永井龍 右足首手術乗り越えサッカーができる喜び
ここ最近の傾向として、トレーニングマッチを非公開、試合を行ったことすら情報を出さないというJクラブが増えている。J1広島は基本的には公開の方針だが、相手が非公開を条件にするのであれば致し方ない。
コロナ禍もあって情報発信の量と質が問われる中、トレーニングマッチで頑張っている姿を読者にお届けするのが難しい現実は、辛い。まして先々週のトレーニングマッチで永井龍が実戦復帰を果たしたと聞いた時は、「この試合を見て彼の現状を伝えたかった」と強く感じた。
昨年10月10日、清水戦での接触プレーで右足首を負傷して以来、FW永井龍はずっとケガの痛みと闘っていた。今季のキャンプでは得点を量産していたが、痛みの消えない状況ではシーズンを戦えないと治療に専念。しかし、復帰しては離脱を繰り返し、状態は前進しない。痛みの要因も分からず、「再びサッカーができるようになるのか」と不安が広がった。
転機となったのは8月。それまで画像にも出てこなかった遊離体、いわゆる「ネズミ」が見つかった。これが痛みの要因だと特定され、8月16日に摘出手術。リハビリと共に、痛みは徐々に収まってきた。
10月26日、チーム練習に合流。ボールを受けシュートを打つ。痛みなし。そのシンプルな事実が、永井の気持ちを晴れやかにさせた。
そして前述のトレーニングマッチに出場。約半年ぶりとなる対外試合だったが、永井に不安はなかった。それよりも「サッカーができる」喜びに気持ちが沸き立ち、約15分の出場時間を全力で駆け抜けた。「いやあ、しんどかったです」と体力的な問題を口にするが、表情は笑顔。「コンディションは着実に上がっている。試合で使う選択肢になってきますね」と沢田謙太郎監督も評価していた。
「選手としてやっと、スタートラインに立てた。残り試合は少ないけれど、無駄にはできない。頑張ります」
どんな苦境にも屈せず、努力を続けた好漢。報われてほしい。
(紫熊倶楽部・中野和也)
◆永井龍(ながい・りょう)1991年5月23日生まれ。兵庫県西宮市出身。ポジションはFW。180センチ、72キロ。背番号20。C大阪U-18から10年にトップチーム昇格。豪州のパース、C大阪、大分、C大阪、長崎、名古屋、松本を経て20年に広島に加入。今季はリーグ戦3試合に出場し無得点。J1・J2通算189試合出場、35得点(11月26日現在)。