槙野に“感謝のイエロー”の村上審判「アドリブです」直前に“無効”のお願い
今季限りで国内トップリーグ担当の審判員から勇退した村上伸次氏が6日、報道各社のオンライン取材に応じ、心境などを語った。4日に担当した最後の試合では、浦和の槙野智章が試合後、ユニホームを脱いで感謝のメッセージの書かれたTシャツを見せるという演出をし、これにイエローカードで応じる、というやり取りが話題になったが、あのイエローカードは「アドリブ」だったと振り返った。
最後の試合とあって、また異例な形ではあったが、事前に割り当てられた試合が名古屋-浦和になることが発表されたこともあって、「反響がすごくて、選手に気を使ってもらうのがすごい嫌だな」と思いながら臨んでいたという。
ただ、両チームの選手から「今日は思い切りいくんで、カード乱発してもいいです」という趣旨の言葉を、笑いながらかけてもらったことで、気持ちがほぐれて試合に入れたという。
そして試合後、「居残りしておいてください」と声をかけられたという。そこで待っていたのが、槙野の演出を含めた、選手らによる“花道”だった。「感謝の気持ちでいっぱいで。感動して“牛歩”で行くぐらいで行きたいなというような思いであそこを歩かせていただきました」と振り返った村上氏は、事前にリリースを出してくれたJFAや、選手からリスペクトされるような判定を積み重ねてきた、諸先輩のおかげだとして、「そちらの方の思いが強いです」と周囲、先人に感謝した。
槙野に出したイエローカードは「まったくのアドリブです」。ただ、「出す前に、少し話していると思うんですけど、無線を使ってこのカードは無効だと言ったような記憶はあります。その後にイエローカードを出したので、完璧にアドリブです」と説明した。
槙野にも迷惑がかからないようにとっさに根回しをした上での“名レフェリング”だった。
審判という職業は、サッカーに限らず厳しい目を向けられがちな職業だ。完璧にこなせて、当然。一つでも判定に誤りがあると「誤審」だとして、多くの批判を受ける。SNSが深く広く浸透した近年はなおさらだ。そんな中でも審判を志す人材、興味を持ってくれる人を増やすにはどうすればよいか。
村上氏は「人間っていうのは7割、8割ネガティブな気持ちになることが多いということを言われているんです。朝起きて、会社に行くの嫌だなと普通に思いますよね」とネガティブな考え方をしがちな中でも、一つポジティブな考えをしてみるのがよいのではないか、と提案する。例えば、「最高の場所で、最高のプレーを見られるっていうことを後進に伝えていこうかなという思いはあるんです」。そこから楽しさ、喜びなどを伝えていくことで、「審判というものにレフェリーを目指さなくても…レフェリーに感銘を受けていただけるとか。そういうふうになればいいのかなと思っています」と前向きに話した。