WEリーグ初代女王INAC神戸の次なる挑戦 5・14国立競技場初進出 目指すは2万人
昨年9月に開幕した日本初の女子プロサッカーリーグ「Yogibo WEリーグ」の初代チャンピオンに輝いたINAC神戸が次なる挑戦に向かう。14日の三菱重工浦和戦(午後4時開始)は国立競技場での開催。WEリーグ初となる国立での試合をホームゲームとして開催し、観客2万人を目標に掲げる。
開幕から首位を独走したINAC神戸は、8日のノジマ相模原戦(ギオンス)に3-0で勝利して、2試合を残しての優勝を決めた。そのため三菱重工浦和戦は消化試合となるところだったが、クラブにその考えは一切ない。WEリーグ優勝のINAC神戸と、皇后杯覇者の三菱重工浦和の対決。「真のチャンピオンシップ」を掲げ、舞台もそれにふさわしい国立競技場と整った。
なぜ神戸のチームが国立でホームゲームを開催するのか。発端は本拠地ノエビアスタジアム神戸が使用できなかったことに始まる。14日と18日にJ1神戸の試合が開催され、芝の負担を考えると、週3回の開催は厳しいという結論になった。
すでに今季2度、同様の要請で会場変更していたINAC神戸だが、アジア制覇を目指すJ1神戸を後方支援する思いもあり、今回も受け入れた。大阪など関西圏での開催も考えたが、神戸を出なければならないのであればと、思い切って国立進出を決断。WEリーグ初代チャンピオンにこだわったクラブは、女子クラブで初となる新国立競技場での開催に価値を置いた。
INAC神戸の安本卓史社長(49)は「今年開催することに意味がある。女子サッカー界の今後のためにも成功しないといけない」とWEリーグ元年での挑戦に力を込める。試合前にはWEリーグアンセム「WE PROMISE」を作曲したTUBEのギタリスト・春畑道哉による演奏も行われる。93年に開幕したJリーグのアンセム「J’s THEME」も手掛けた春畑は、WEリーグアンセムについて、Jリーグと同じ人が作るべきなのかとの葛藤もあったというが、Jリーグの村井満前チェアマンらの後押しもあり、制作に着手。開幕前のプレシーズンマッチにも足を運び、女子サッカーのクリーンでひたむきなプレーを肌で感じて「WE PROMISE」を完成させた。
そして93年5月15日のJリーグ開幕セレモニーで「J’s THEME」を披露して以来、29年ぶりに国立のピッチに立つ。当日は29年前にJリーグの開会宣言を行った川淵三郎氏も来場する。
キックインセレモニーには11年W杯ドイツ大会を優勝した元なでしこジャパンの澤穂希さん、宮間あやさんが登場。チケットも学生は無料、サイド自由席は1000円と低価格に抑え、国立競技場を行ってみたいという人にも優しい価格設定となっている。また、国立まで駆けつけられない地元神戸のサポーターに対しては、阪神戦中継でおなじみのサンテレビが午後4時から生中継する。
日本女子サッカー界の悲願であったプロリーグとして発足したWEリーグだが、観客動員にはここまで苦戦。前節を終えて、1試合あたりの平均観客数は1432人と伸び悩む。目標の平均5000人に届かないどころか、5000人を超えた試合が1試合もない。
INAC神戸は平均2139人と全11チームの中で大宮の2167人に次いで2位だが、誇れる数字ではない。三菱重工浦和戦で最多観客試合を更新することは確実だが、一気に2万人を目指す。
INAC神戸のホームゲームでの最多観客はW杯優勝直後の空前のなでしこブームに記録した11年7月31日の岡山湯郷戦(神戸ユ)での2万1236人。澤さんの現役ラストイヤーとなった15年9月27日の浦和戦(ノエスタ)で1万1865人入ったのが最後の1万人超えとなっている。「プロとなったリーグで、プロリーグ前の記録を超えないわけにはいかない」と安本社長。WEリーグ初代チャンピオンの挑戦はまだ続く。