野々村芳和チェアマン 描くJリーグの未来像 サッカーをよりよい「作品」に

 Jリーグの野々村芳和チェアマン(50)が、15日までにデイリースポーツのインタビューに応じた。1993年の開幕から30年目を迎えたJリーグで史上最年少、選手経験を持つ初のチェアマンとして就任。スタジアムに声援を取り戻し、サッカーがより魅力的な「作品」であり続けるために、トップクラブのさらなる成長と地方クラブの地域における存在感を強調。気鋭のチェアマンが描くJリーグの未来像を語った。

  ◇  ◇

 -就任から4カ月が過ぎた。

 「サッカーで言うと全く別のリーグ、欧州5大リーグに移籍した日本人選手みたいな感じ(笑)。習慣も違えばサッカーのテンポも違う。そんな感じだったが慣れましたよ」

 -声出し応援の運営検証が、6月11日のYBCルヴァン杯の鹿島-福岡戦(カシマ)から始まった。

 「最初にチャント(応援歌)を聞いた時は本当に涙が出そうになった。でも自分がここでポロッとしちゃったら違うだろうと思って我慢していた。鹿島の皆さんとも話をしたら、同じような感情の人が多かった。『やっぱりこれだよな』と思った人は多かったと思う」

 -サッカーを「作品」と表現する。良い「作品」を作る上で必要なものは。

 「まずピッチ上のレベルをどう上げるか。そしてスタジアム。大きさやサッカー専用ということではなく、地域に合った、『行ってみたい』と思わせる雰囲気は重要。後は集まる人々の熱量。サポーターがいて、声を出して歌う。あのスタジアムの雰囲気は『作品』には絶対に必要。熱量があれば、ピッチのレベルに差があってもJ1と同等か、それ以上の『作品』にできる」

 -アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)が来季から秋春制に移行。シーズン制の議論は避けて通れない。

 「シーズン制に限らず、Jリーグや日本のサッカーがどうすれば良くなるかを考えて議論した方がいい。議論しないとか、できない前提で話すことは意味がない。Jリーグも世界を見据え、変化しつつ伸びていかなければならない。満場一致の施策やアイデアがリーグを変えるとは思えない。今のままでもいいと言うならそれでもいいが、そうではない」

 -Jリーグの未来像は。

 「トップ(クラブ)をどれだけ伸ばせるか。サッカーである以上、国内だけでなく海外とも対決しなければいけない。Jリーグとしてのサポートや施策が絶対に必要。一方で地方がどう輝くか、お金を使ってでもやっていきたい。今は地方の小さなJ3クラブかもしれないが、30年後、50年後に地域で認知され『このクラブが地域にあって良かった。地域の課題を解決してくれた』と思われるような。もしかしたらJ3のままかもしれないが、それはそれで価値あること。強い弱いも大切かもしれないが、Jリーグ全体で言うと、いかに地域のための取り組みができるかの方が大切だったりする」

 -選手の競技レベルは上がった。今後は経営者、フロントにプロフェッショナルが求められる。

 「(人材は)いるとは思うが、その人たちを給与面などで評価できていない。次のフェーズはフロントやマネジメントがプロになれるかどうか。力ある人が評価される世界にならない限り、そこを目指す人が出てこない」

 -クラブの社長時代とは違った視線。

 「全然違う。でも勝敗のプレッシャーとか、現場はもちろん社長も強化も本当にみんな大変。(試合を)見られなかったもん。クラブを分かった方がいいと思うが、リーグの人もクラブが分からないからこそ公平に俯瞰(ふかん)で見られる部分もある。そのバランスはうまく保っていきたい」

 ◆野々村芳和(ののむら・よしかづ)1972年5月8日、静岡県清水市(現静岡市清水区)出身。清水東高から慶大を経て、95年に市原(現千葉)に入団した。2000年に当時J2の札幌に移籍し、同年のJ1昇格に貢献。01年に29歳で現役を引退した。J1通算118試合6得点、J2通算36試合2得点。13年に札幌社長、22年1月に同会長に就任。3月に第6代Jリーグチェアマンに就いた。

関連ニュース

編集者のオススメ記事

サッカー最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング(サッカー)

    話題の写真ランキング

    デイリーおすすめアイテム

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス