ルヴァン杯 広島が劇的逆転V 佐々木翔「彼の力をもらえたのかな」急逝の工藤さんに捧げる頂点
「ルヴァン杯・決勝、C大阪1-2広島」(22日、国立競技場)
広島は0-1の後半ロスタイムにFWピエロス・ソティリウがPKを沈め土壇場で追いつき、同56分にも再びソティリウがコーナーキックから右足で合わせて劇的な逆転勝利。ルヴァン杯で初優勝を決めた。
終了間際までリードを許す展開をひっくり返し、DF佐々木翔は「うれし涙で崩れてしまった。ただただこれを目指してやってきた。最高なものでした」と喜んだ。
後半8分には佐々木のバックパスのミスから先制点を許した。「僕の実力不足です」とした上で「あの現象が起きた後に、若い選手とベテランの選手含めて崩れることなくやることは変わらないよと声をかけてくれた。僕がというより、そこからチームを崩さないでいてくれた。『何してんだよ』となる形でしたけどその中でチームは崩れない。今年やってきたチームの積み重ねがああいったところで出たのかなと思う」と仲間に感謝した。
広島は16日の天皇杯決勝でも甲府に敗れタイトルを逃したばかりだった。Jリーグ発足以降、天皇杯6回とルヴァン杯の前身となるナビスコ杯で2回決勝に進んでいる。だが、いずれも敗れて準優勝に終わっていた。佐々木は「このチームが歴史を塗り替える」と誓った通り簡単には負けなかった。カップ戦決勝では連続の敗戦という負の歴史に終止符を打った。
2017年から2シーズンをプレーした元日本代表FWでJ3宮崎の工藤壮人氏が水頭症と診断され、試合前日の21日に32歳の若さで亡くなった。スタジアムでは広島サポーターにより「工藤壮人の魂は永遠に俺達とともに」と横断幕が掲げられた。工藤さんにささげるタイトルにもなった。
試合前には黙とうもささげられ、黙とう後には工藤コールも響き渡った。両チームの選手は腕に喪章を巻いてプレーした。
佐々木は「感情の整理も難しいですし、言葉で表すのも難しい。正直、黙とうの時にも涙が流れてきてしまうような形でしたけど、僕らが健康であって、サッカーができている環境に感謝しながら彼の分もプレーし続けないといけない。僕らにできる精一杯のことをやろうという感情でした。今日は彼の力をもらえたのかなと思う。なかなかない逆転劇でした」と、かつての同僚に捧げる優勝となった。