WEリーグ 高田春奈チェアに聞く 女子プロリーグの未来像【後編】

 11月11日に3年目のシーズンが開幕する女子プロサッカーリーグ「WEリーグ」。けん引するのは22年9月に2代目チェアへ就任した高田春奈チェア(46)だ。実業家としての会社経営、そしてJリーグクラブの経営も経験。今後の女子サッカー発展を託された若きリーダーの人物像に迫り、女子プロリーグの未来像などを聞いた。

 -20年に長崎の社長に就任。今までの会社経営とサッカークラブ経営は大きく違った。

 「基本はやはり人が働いているものなので。人が信頼し合って働くことや、役割に見合った組織の形、それに見合った人を採用する、そういうことが根本的な問題だという認識は一緒でしたね」

 -それまでもサッカーは見ていた。

 「見てないです。長崎が2012年にJ2に上がったときからジャパネットグループがスポンサーとして応援していたので、試合を見に行ったりとかはしてましたけど」

 -世代で言えば高校時代にJリーグが開幕し、その後のW杯初出場など大きな世間的ムーブメントがあった。

 「少し遠目から見ていました。ミーハーなものに抵抗があって(笑)。ただオリンピックが好きでシドニー、アテネ、北京、ロンドンを現地に見に行きました。その空間が好きなんですよね」

 -自身でスポーツの経験は。

 「中高でバドミントンをやっていたんですけど、その時からスポーツは見る方が好きで。野球とかバレーボールとか、当時は関西に住んでいてグリーンスタジアム神戸の西武戦は必ず行っていました。当時は西武ファンでした。私、パ・リーグ派なんで(笑)」

 -スポーツを見る方が好きな理由は。

 「やるよりも見る方がいいなって高校生ぐらいのときに気づいてしまって。バドミントンの試合の時は、そこまでして勝たなくていいやって思っちゃうんですよ。でも見てるときは自分の好きなチームを応援する。めちゃくちゃ入り込んで、プレーヤーの気持ちとかを想像して感情移入する。でも自分が勝負の場に立つと、もういいやって(笑)」

 -長崎の社長を経てJリーグの理事、日本サッカー協会(JFA)へと関わっていく。

 「スポーツが人の心を揺さぶるとか、人生を豊かにするのは、自分もスポーツを見るのが好きな人間として、すごい力を持っていると思っていたし。特に長崎にかかわるようになった時、本当に長崎県の未来を背負うぐらいの、そういうところもあるんですよね。それが今は全国に60クラブあり、統括しているのはJリーグ。Jリーグってめちゃくちゃ社会貢献している組織だなって思って」

 -クラブ経営とは違う魅力があった。

 「もちろん長崎を何とかしたいという思いもあったんです。ただ、自分自身にサッカーの知識があるわけじゃない。おこがましい言い方ですけど、やっぱり勝たせてあげることができないんですね。勝ち負けはコントロールできないと考えた時に、クラブ経営よりもクラブ経営している方たちを支えることが自分としてもいいのかなと。そういう機会をいただいた時にチャレンジしようとJリーグに入りました」

 -WEリーグのチェアという立場は経営者とも違う。

 「ただ、Jリーグの社長ってみなさん結構表に立たれるじゃないですか?特にウチの父とかそういうタイプで(笑)。社長ってずっと裏方だなと思っていたんですけど。今も自分がどうあるかを見られていて、それがWEリーグと思われる責任もある。それはクラブ社長の時と同じ感じだなと思います」

 -3シーズン目のWEリーグが開幕する。男子との違いを出した女子サッカーの面白さを追求したいのか。

 「いいとこ取りをしたいなと思っています。今回、WEリーグカップの決勝も両クラブのサポーターがすごい空気感を作ってくださった。同時にWEリーグが目指しているのは気軽にサッカーを楽しんでいける雰囲気。みんなを受け入れられる空気を保ち、サッカーを愛する人たちに女子サッカーも見てほしいという気持ちです」

 -なでしこのW杯後で来年はパリ五輪がある。この間で開幕する3年目は大事な年。

 「めちゃくちゃ大事な年だと思います。W杯があって想像以上に多くの方が『なでしこジャパン、やるね』と思ってもらえた。その人たちが日常的に見られる場所でWEリーグがある。みなさんが足を運びやすく、行けば楽しかったと思ってもらう。当たり前の流れを作っていくしかないと思っています」

 -今年は12チーム。将来最終的にはチームを増やしたい。

 「今ちょうどそれを議論しているところで、最終形をJリーグみたいにというのは一切ないですが、地域が偏ってしまっているのはある。ただ、今の経営面でこれ以上増やすと難しい。例えば九州とか北海道のチームが入ってくるために…その基盤を整えていろんなところに(チームを)置いていけるかを考えています」

 -女子サッカーの未来のビジョンは。

 「代表の試合で女子の試合はみんな見ると思うんですよ。バスケット、バレーボールにやソフトボール。ただ、プロリーグでJリーグやプロ野球みたいに見られる女子のスポーツコンテンツがないと思うんですね。プロとして立ち上がったわけだから、私たちがそうならなきゃいけないと思っています」

 -女子プロサッカーを見ることを日常に。

 「まず国内のスポーツコンテンツとして、プロとして女子の試合が見てもらえる日常になりたい。そのリーグが世界と対等に渡り合っていることを示したい。そうすれば日本のジェンダーギャップも少しは埋まるんじゃないかなって。それは、遠くない夢として持っています」

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