神戸GK高山汐生 尊敬する叔父・高山善廣の金言胸に守護神奪う 「親に言われたことより叔父から言われたことを受け入れていた」

 練習する神戸・高山(手前)=1月19日、沖縄県
 「ノーフィアー」で活躍した高山善廣
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 Jリーグは23日に開幕し、昨季J1を初制覇した神戸は24日の磐田戦(ヤマハ)で初戦を迎える。昨季からの上積みを目指す上で欠かせない新戦力のインタビューを3回にわたり紹介する。1回目は筑波大から入団したGK高山汐生(しおき、22)。身長190センチ、体重83キロとスケールの大きい守護神は、父方の叔父がプロレスラーの高山善廣(57)で幼少期から尊敬してきた。プロ入りにあたって授けられた金言を胸に、新たな世界に飛び込む。

 手本となる存在が常に身近な場所にいる。そんな恵まれた環境を、高山は成長につなげようとしている。まずは日本代表GK前川黛也(29)らとのチーム内競争を勝ち抜き、レギュラーを目指す。

 「技術も参考になるし、サッカー選手として目指す形が目の前にいるのはすごくいい。日本代表の前川さんが近くにいるということは、超えられれば代表への道もあるわけで、チャレンジしない選択肢はない」

 周囲の存在が向上心をかき立て、一段高い段階へと自分を導いてくれる。幼少期から慕う叔父もその一人だ。カリスマ的な人気を博してリングで戦っていた『プロレスラー・高山善廣』を誰よりも尊敬してきた。

 「何より説得力がある人。子供の頃から、親に言われたことより叔父から言われたことを受け入れていた。親も僕を心配していろいろ言ってくれたんですが、あまり聞かなくて。叔父から言われたことは逆に、すぐやろうという感じだった」

 叔父は2017年、試合中の事故で頸髄(けいずい)完全損傷の重傷を負い、現在は不屈の魂でリハビリに励む。今年の正月に会った際は、神戸入りを自分のことのように喜んでくれたという。「ずっと気にしてくれていたので『おめでとう』と言ってくれた」と祝福とともに、プロになる上で助言ももらった。

 「一番響いたのは『結局、競技をやるのは体だから体を大事に』と。ケガしないこと。シンプルだけど間違いない言葉。さすがだなと思った」

 体を張ってその地位を築いてきた叔父の言葉を改めて心に刻んだ。一方で、身近に偉大な存在がいながら自身はレスラーの道は考えたことはなかったのだろうか。

 「親に禁止されていて(笑)。小さい頃に弟とプロレスごっこをやっていたら、親に『危ないから』と止められた。その後、絶対にやらせてもらえない」

 アスリートのDNAを受け継ぎ、長身と優れた身体能力を持つ高山は5歳の時に地元のチームでサッカーに出会う。小学生時代はGKだけでなく、センターバックなどフィールドも経験。藤沢市選抜にも選ばれた。小6時に湘南のジュニアチームと対戦した際、同クラブを指導していたジョアン・ミレッ氏(現浦和GKコーチ)の目に留まり、中学から湘南のU-15に入団した。

 ジュニア期に素質を開花させたが、順風満帆な道とはいかなかった。湘南U-18からトップチーム入りを目指すもかなわず、平塚学園高卒業後は筑波大に進学。関東大学1部リーグで4年時に優勝したが、古巣の湘南から声がかかることはなかった。秋口まで進路は決まらず、リーグ戦の合間を縫ってさまざまなクラブの練習に参加。J1、J2とチャレンジしたが入団には届かなかった。

 「どうしようかと思っていた時、来年のことは考えず今年に集中しようと切り替えた。夏の練習参加が終わり、大学の監督に『もう練習参加には行かないので大学で結果を出せるようにします』と言ってから、いいプレーが続いた。神戸のスカウトの方が来られた試合もいいプレーができて、入団できたんです」

 進路が決まったのはリーグ戦も大詰めの秋口。「運がいいと言われるし、自分でもそう思う」という高山に、思わぬ形で神戸入団への道が開けた。何度も挫折を味わったからこそ身につけた強さがある。それを生かしてクラブへの感謝を勝利という形で届けたい。

 「自分の特長であるクロス(への対応)の部分はしっかり出していきたい。成長したいし、プロである以上は試合に出ないと価値はないと思っている」

 2連覇を狙うチームの一員として貢献し、将来は日本代表の守護神に。1年目から勝負を挑む。

 ◆高山善廣とは 『帝王』の愛称を持つ高山善廣(57)は1992年、UWFが分派したプロレス団体の一つUWFインターナショナルからデビューした。95年には新日本との対抗戦などで頭角を現した。97年から全日本に参戦し、大森隆男とのタッグ「ノーフィアー」で活躍。00年のノア旗揚げを経て01年にフリーとなった。

 代名詞のエベレストジャーマンに象徴される打撃技、投げ技、関節技が軸のUWFスタイルに、196センチ、125キロの巨体を生かしたパワーファイトを融合した唯一無二の型を持つ。加えて知的で辛辣(しんらつ)なコメントでマット界を代表する選手に成長した。09年に史上初めてメジャー3団体のヘビー級王座とタッグ王座を完全制覇した。

 01、02年にはMMAにも参戦し、02年のドン・フライ戦は壮絶なド突き合いで歴史的名勝負となった。17年、試合中に頸髄完全損傷の重傷を負い、現在もリハビリを続けている。

 ◆高山汐生(たかやま・しおき)2001年6月13日、神奈川県藤沢市出身。5歳から湘南レオーネでサッカーを始める。片瀬中、平塚学園高時代は湘南ベルマーレのU-15、U-18に所属。筑波大蹴球部を経て、今年神戸入団。190センチ、83キロ。

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