【福西崇史氏の視点】よく追いついた1点 緊張感やしびれる試合は、チームにとって刺激として大事
「W杯アジア最終予選、日本代表1-1オーストラリア代表」(15日、埼玉スタジアム)
日本は1-1で引き分け、3勝1分けで勝ち点10となった。前半0-0で、後半にDF谷口彰悟(シントトロイデン)のオウンゴールで先制されたが、MF中村敬斗(スタッド・ランス)の突破からオウンゴールを誘い、追いついた。2002年日韓、06年ドイツW杯日本代表の福西崇史氏が分析した。
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2点ともオウンゴールという、なかなか起こり得ないことが起こった。その中でも苦しんでいた相手を崩すということでは、武器である中村と伊東のスピードが功を奏した。
失点した場面は、準備だった。デュークが競りにいく、1トップで当てにいくときに、谷口がいかなくてはいけない。そこに後ろに飛び込むということで、スペースいっぱい相手が入ってくる形。そこで、今度は谷口が戻りながらというところで、バランスが崩れる。しっかりと迎え撃つような形が取れていなかった。
結局右足を出したが、後ろ向きだった。あり得ることだが、左足の方が安全だと思う。そこの部分の準備ができていなかった。
ただ、その後に1点を返した。後半、相手を追い込んでいく力を見せたのは日本の強さ。オーストラリアのオウンゴールを誘ったのは、中村の切り込みのうまさだ。
それまで三笘がどんどん仕掛けていたし、前半からチーム全体で仕掛けたことが、後半オーストラリアにとっては体力的に厳しくなった。あそこまで中村が中に切り込めば、ディフェンスは対応が難しい。突破のキレが中村にはある。
ホームでの勝ち点1だが、W杯予選全体を通して言えば痛くはない。相手に守られることはあり得るし、先制されて追いついた。試合を通じて日本が押しっ放しだったことを考えても、よく追いついた1点。日本は強いなと思うゲームだった。負けていないという結果が大きい。
こういう緊張感やしびれる試合は、チームにとって刺激として大事になる。オーストラリアは力があったし、日本は難しいゲームを引き分けに持ち込めたのは良かった。
3バックで、メンバーをそこまで代えなかったことは、森保監督がベースにして戦っていくという土壌ができた。次はアウェーで、調子のいい選手を使っていくとか、伊東や中村を先発で使うのも手だろう。いろいろとチーム作りにも着手できるのではないか。試していくこともあるのではないだろうか。(2002年日韓、06年ドイツW杯日本代表=デイリースポーツ評論家)