世界最速W杯出場決定の裏で 日本選手の活躍に「闘争心と悔しさ」 代表から遠ざかるマジョルカ・浅野拓磨が明かす胸の内
サッカー日本代表が世界最速で8大会連続8度目のW杯出場を決めた。20日のバーレーン戦で久保建英(レアル・ソシエダード)は1G1Aと大活躍。一方、森保ジャパンの常連だった浅野拓磨(マジョルカ)は2024年9月を最後に日本代表から遠ざかっている。今季はレアル・マドリードとのリーグ開幕戦でスペインデビューを飾りながら、その後の怪我で長期離脱。しかし年明けから復調し、リーグ初ゴールを決めるなど調子を上げている。「1年先に待っているW杯には絶対行くと思っている」と決意を明かす浅野が、怪我による心の動き、自身不在の日本代表への思い、さらには久保、三笘薫(ブライトン)ら代表メンバーに抱く感情などを赤裸々に語った。
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-3月のアラベス戦でスペイン初ゴールを決めて何を思った?
「マジョルカに来てからゴールという形でチームに貢献できていなかった。とにかく早くゴールが欲しかったから率直にうれしかった。ここからリラックスしてプレーできるかなという感じだった」
-エスパニョール戦で2点目。それまでチャンスで決められなかった時期を経てホームで連続得点となったが、何か変わったことがあった?
「変わったことはないと思う。これまでも長くゴールが取れない時期はあった。ただチャンスは作っていたし入っていてもおかしくないシーンはあったので、ネガティブにならずにシュートまで行けているという自信は持ち続けていた」
-リーグ15試合目で初ゴール。それまでにケガで9月から12月まで離脱した。
「マジョルカに入ってから、またリーグ開幕とすごく良い感覚を持っていて、自分の特徴を活かせると思っていたし、数字を残せるという手応えがあった中での怪我だった。だから悔しかった。怪我から復帰してからも自分の感覚的に良いコンディションに持って行けなかった。自分的に良い感じでやっていると思えない期間が長かったので怪我の影響は間違いなくある。ただ怪我も含めてその選手の実力だと思う。それでも結果が出ないことによる焦りはなかった。良い状態に戻していければチームでポジションを取り返せるという自信はあった」。
-怪我をする前の最後の試合は久保選手のいるレアル・ソシエダード戦だった。それ以前にも膝を気にするシーンもあった。無理していた部分が?
「特に無理していたという感覚はないが、遅かれ早かれそのタイミングが来たということだと思う。マジョルカへ来る前、ドイツの時から怪我をするリスクを感じながらその中で自分がやれること、無理し過ぎず今の自分ができる100%を出すという期間がドイツの時から長くあり、どこかで怪我すると思っていた。マジョルカ来てシーズンに入ってからも自分の100%のパワー、スピードを出しきれなかったので、逆に怪我をして吹っ切れたところがあった。(気持ちの)切り替えができた」
-ケガでの離脱中に日本代表の試合や結果を追っている?
「時差があるから練習の時には見られない時もあるが、家帰って可能な時は見ていた。メンバーにいなくても同じメンバーという感覚は常に持っているし、いちサッカーファンとしても日本代表がどんな試合をしたのかというのは気になる。チェックしていれば悔しさが沸々と湧いてきて『また明日から頑張ろう』という気になっていた」
-動向が気になる特定の選手はいる?
「それはない。常に自分のことしか考えていない。それは『自分だけ』という意味ではなく、日本代表のために、マジョルカのために自分に何ができるのか。言い換えれば自分のできることを発揮することがチームのためになるからどういう状況でも他人のことを気にすることはない」
-活躍している選手として、例えば三笘選手について思うことは?
「自分に当てはめて何か感じることはないが、いま日本代表の中でプレーしている選手の中でもトップの選手だと思う。世界のトップリーグだと思うプレミアリーグで結果も出ている。年下ではあるけど尊敬する部分はたくさんある。彼の姿勢、プレースタイルはサッカーをしている誰もがヒントになる。盗めるところがたくさんある選手」
-同じリーグにいる久保選手は?
「タケも同じように世界のトップレベルの選手だと思う。僕とは全然タイプは違うが、自分が課題としているところで彼が強みとしているところはたくさんある。薫とタケに限らず日本人選手が活躍したというのをニュースが流れると常に闘争心と悔しさが湧いてくる。それが僕にとって一番のエネルギー。今の日本代表でそういう気持ちを与えてくれる選手たちがいっぱいい過ぎて、それでも自分ができないとは一切思わないし、誰にも負けないようにやるしかない。」
-日本代表での自分について
「代表に行って常に感じることは、ポンと集められてやる集団なので簡単じゃないということ。でも急に集まってもできる選手たちが集まっているので、チームだったら(パスが)出てこなかったのに代表だったら出てくる。そこで一歩出遅れるという感覚を思い出させてくれる場所。僕は行った時にどうするかしか考えてないのでこれからのイメージというのはあまりないが、レベルが高くてなかなか他では経験できない環境ではあるので、常にそこへ身を置きたいなというのはある。今メンバーに入ることはできていないが焦ってはいない。W杯へ行くためにどうするかしか考えていない」
-昨年11月に30歳を迎えた。心境の変化はある?
「ちょっとやっぱり。これまで20代という感覚でやってた分、今までは『年齢は関係ない』って思ってやっていた。なってみて『30になったんだ』という感覚はある。実感はないが焦りは感じる。もっとやんないとって。今までの自分を振り返っても、めちゃくちゃやっていたと思うし、振り返った時に今の自分があれだけやれるかなって。でも正直今の方がやっている。でも『もっとやんないと』というのが、今まで経験してきた中で休むことがその“もっと”の中に入っているかもしれないし、怪我しないために何をするのかも含まれる。考える質は間違いなく変わっているしもっと成長しないとという焦りは30歳になって今まで持ったことのない感覚になった。同時に全然成長できるとも思うし、結論として年齢関係ないかなと(笑)」
-短期、中期、長期に分けた今後の目標は?
「短期で言ったら今マジョルカでやっていることに100%集中している。もっともっとゴールを取ること。数字を定めないけど最低でもあと5点以上、二桁は常に取りたいと思っているので、そうなるよう、チームの勝利に貢献できるようにしたい。その結果チームがカンファレンスリーグ、ヨーロッパリーグ、欲を言えばチャンピオンズリーグを目指していない訳ではないので残りの試合を頑張りたい」
「中期で言えば、また日本代表に入って1年先に待っているW杯には絶対行くと思っている。自分の中では決められた未来だというぐらい自信を持てるようやれることをやらなければならない。決まっていないからこそ何をするべきなのか、何ができるのか、それを常に考えながら、そのために今マジョルカで全力を尽くしたい」
「前回のW杯を経験してから目標の定め方、未来の見方というのが変わった気がする。それまではなんとしてもW杯、カタールに行くことしか考えていなかった。それ以外は何を捨てても良かったしそれ以外の目標が僕の中になかった。でもそれを一つ経験して安心しているとか余裕を持っているということではないが、W杯以外の目標もたくさん出てきた。たとえばチャンピオンズリーグに出たいとか、ラ・リーガで得点王を取れるぐらいの選手にならないとと思っているし、自分が成し遂げていない目標はたくさんあるので、今までやったことのない経験をしてみたい。一つ一つの目標を叶えるため、今は成長することにとらわれている」
◆インタビュー番外編
-自分の性格を一言で。
「元気」
-好きな言葉。
「感謝」
-朝起きてまずすること。
「顔を洗う」
-冷蔵庫に必ずあるもの。
「オーツミルク」
-今日はご馳走。そのメニューは?
「焼肉」
-オフの1日に何をする?
「家族と電話」
-最近もらったメッセージで記憶に残っているもの。
「ムズッ、何にも記憶に残ってない」
-ネットで悪いこと書かれていた。気にする?
「気にはなる」
-ストレス解消法。
「ストレスはたまらない」
-引退後の夢。
「サッカー選手よりも格好良いことをする」
ーサンフレッチェ広島での1番の思い出。
「僕自身の2度目の優勝」