矢野通訳が語る人物像とザックの教え
上司としてのサッカー日本代表のアルベルト・ザッケローニ監督(61)を、就任した2010年から通訳として行動をともにしている矢野大輔通訳(33)に4日までに聞いた。
矢野通訳には、監督にしかられた思い出が1度だけある。11年のアジア杯、1次リーグ・シリア戦でのこと。オフサイドポジションにいた相手選手を倒したとしてGK川島が退場になるなど、判定に泣かされた末、2‐1で勝利した。劇的な展開に感激した矢野通訳はシリア選手の前でも大喜びした。その時に「きちんと相手もリスペクトするように」とたしなめられた。
ザッケローニ監督の教えの根底にあるものは「損して得を取れ」という考え方だという。矢野通訳は「1つをのみ込んで、その後の結果や自分に有利になるであろうことを見据えている」と思慮深さに舌を巻く。
指揮官がイタリア1部リーグ・トリノを率いた06‐07年のころ、矢野氏は当時、所属していたFW大黒将志(現J2京都)に通訳としてついていた。その時も「全体練習の後に時間をつくって説明してくれた。紳士な方だと思った」と、いい思い出が残っていると話す。
ただ、真面目で堅物なイメージだけではない。「うわさで聞いた話ですけど、(東京都)下北沢の(パスタ店)『すぱじろう』に監督が行っていたとか」。親しみやすい一面と慎重な振る舞いのギャップも愛される一因なのかもしれない。