本田ならできる!跳ね返す“一発”逆転
「ブラジルW杯・C組、日本-ギリシャ」(19日、ナタル)
サッカー日本代表は18日(日本時間19日)、ギリシャ戦に向けて前日練習を行った。FW本田圭佑(28)=ACミラン=は、冒頭の公開部分ではランニングやステップワークで体を動かした。通例の試合前日通り、取材エリアでは報道陣の呼びかけに応じず立ち去った。負ければ決勝トーナメント進出は絶望的。小学校時代から乗り越えてきたように、サッカー人生最大の逆境も突破する。
逆転力を発揮する時が来た。本田は湿った空気が覆うドゥナス競技場のピッチを険しい表情で走った。ステップワークでは最後方からスタートし、チームを下支えしようとしているようだった。
人生を振り返ると逆境の連続だった。父の司さんは事業に忙しく、経済的にも余裕がある方ではなかった。家庭の事情で祖父母が親代わりになってくれた。G大阪ジュニアユースに入った後も1つのスパイクを丁寧に補修して使い続け、ボロボロになってからも電車に忘れた際は真っ青になって取りに帰った。
大胆な行動を取ったこともある。05年のU‐20W杯では主力ではなく、当時の大熊監督(現大宮監督)の部屋へ直接乗り込み、「何で僕を使わないんですか!」と直談判。大熊監督を「後にも先にも直接使えと行ってきたのは本田だけ」と、たじろがせた。
前回のW杯から大半を過ごしたロシア1部・CSKAモスクワでも、右膝の手術を受けたり、望んだ移籍が流れたりとサッカー選手としての逆風に耐え続けた。そしてそれは、一人の男としても同じだった。
昨年4月に父親代わりだった祖父・満さんが亡くなった。本田は葬儀で、一族の代表として出席者にあいさつして回った。別の葬儀に出席していた子どもに「本田だ」と声をかけられると、子どもの目線まで頭を下げて「サッカー好きか。頑張れよ」と返した。人生最大の悲しみの中でも、本田圭佑としての役割を全うした。
初戦黒星で決勝トーナメント進出は難しくなった。取材エリアは無言で通過したが、W杯開幕前から「理想は勝って勢い良くいくということですけど、大体、そんなふうにはいかないというのが今までの人生経験」と想定していた事態でもある。逆境男の生きざまを見せるのは今しかない。