U23秋葉コーチ 死闘を振り返る

 リオデジャネイロ五輪アジア最終予選に向けて、カタール・ドーハで事前合宿中のU-23日本代表は13日に1次リーグ初戦の北朝鮮戦を迎える。今予選は96年3月のアトランタ五輪アジア最終予選以来20年ぶりにセントラル(短期集中開催)方式で行われる。当時、代表の一員として28年ぶりの五輪切符を勝ち取り、五輪本大会でブラジルから金星を挙げた「マイアミの奇跡」も経験した秋葉忠宏コーチ(40)が6日までに死闘を振り返った。

 ◇   ◇

 -セントラル方式の難しさとは。

 「一発勝負では間違いを犯すことができない。一つの判定やカードで取り返しがつかなくなる怖さがある。逆に劇的な勝ち方などで勢いに乗れれば、最後まで波に乗って行ける良さはある」

 -アトランタ五輪予選を振り返って。

 「正直チームはまとまっていなかった。個性が強く、食事もバラバラで帰るのもバラバラ。ただ、最後はすごくまとまった。負けるくらいならまとまって勝つかと。とにかくみんな負けたくなかった。勝ちたいから要求し合っていた。ゾノ(前園)やヒデ(中田英)が言ってきたことに対して、練習で擦り合わせて良かったらやろうかとか。ぶつかっていたと言う人もいますけど僕らにとっては当たり前だった。ケンカして口を利かなくなるとかそういう関係ではなかった」

 -最終予選直前にはエースの小倉隆史が大けがを負った。

 「ずっと天井の一点を見つめて何も話さなかったので、僕らも一言二言声を掛けることしかできなかった。その姿見るだけでオグがどれほど悔しいのかをみんなが理解した。それも一つにまとまるきっかけとなった大きな理由だった。オグを本大会に連れて行ってやるんだと。ただ、あんなことは起こらないのが一番よかった」

 -準決勝では五輪出場権を懸けてサウジと対戦した。

 「ピークをそこに持ってきていた。試合前から緊張感もあり、気迫がみなぎっていた。僕はサブでしたが盛り上げて、ベンチからもすごく声が出ていた。スカウティング映像を見せられた時『とんでもなく強いチーム』と思ったが、世界への扉を前にして、向かって行くパワーのようなものはみんな感じていた。(監督の)西野(朗)さんも『ここでぶっ倒れてもいいからやってこい』とゲキを飛ばしていた」

 -当時の選手と比べて今の選手は?

 「サッカーに対して成熟している。指導者が求めることを体現した上で自分の個性を出そうとしている。僕らの頃より、よっぽど大人で洗練されている」

 -静かなイメージも受ける。

 「僕らの時代より静かですけど、表現の仕方がそれぞれある。内に秘めたものは、態度一つ見れば分かる。(8月の)京都合宿くらいから話すようになってきて変わってきたなと実感している。彼らも負けたくない、強くなりたいというのを持っているというのは伝わる」

 -いよいよ決戦が始まる。厳しい戦いも予想される。

 「土壇場で火事場のクソ力を発揮するための土壌はつくってやろうと監督とも話している。最終予選の土壇場で殻を破ってやんちゃになり、いい意味で期待を裏切ってくれる選手が出てきてくれるかもしれない。押さえつけるような環境はつくっておきたくない」

 -秋葉コーチから見た手倉森監督は。

 「懐が深い。いろんなものを受け入れる器がある。物事に対して動じないし、全てをポジティブに受け止める。言葉をすごく大事にして、選手やチームに何が必要かを敏感に感じている。空気を感じてマネジメントできるのが魅力です」

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