長友は危機感を形にする“変化の象徴” 厳しいダメ出し、金髪化でチーム鼓舞
サッカーのW杯ロシア大会に出場する日本代表は13日(日本時間14日)、開催地ロシアに入り、ベースキャンプ地カザンで1次リーグ初戦のコロンビア戦(19日・サランスク)に向けて最終調整を行う。西野朗監督(63)が率いるチームは強化試合3試合を1勝2敗で終え、本大会に向かう。初陣から2連敗を喫し、閉塞感と危機感に包まれた日本代表だったが、スイス戦後から変化の兆しが表れた。変化の象徴となったのはDF長友佑都(31)=ガラタサライ=だった。
風向きは変わっただろうか。3バックで臨み0-2と敗れた5月30日のガーナ戦は、西野体制の初陣ということを差し引いても乏しい内容だった。試合後の選手からは「2失点以外の部分ではやられたなという感覚は全くない」というMF長谷部の言葉を筆頭に、長友も「ポジティブな面も見えた」と話すなど前向きな発言が並んだが、本番までに残された時間を考えれば強い違和感を覚えた。
続く6月8日のスイス戦は4バックで挑み、なすすべなく敗れた。DF槙野は「3バックか4バックか分からないが、監督の求めるものをピッチの上で表現できれば」と口にしたが、図らずも西野監督と選手の間でチームの方向性が定まっていないことを露呈した。敗戦後の指揮官はそれでも「なぜネガティブにならないといけないのか。チームとして危機感は全く感じていない」と、どこまでも前向きだったが、選手の側には変化が表れた。
その象徴は長友だった。スイス戦直後に「これではW杯は勝てない」と警鐘を鳴らし、翌日には髪を金色に染めて練習に現れた。「チームの雰囲気も自分自身も変えたかった」と話し、「ベテランと言われる選手がもっと戦って、もっと走らないと、結局経験も生きない。(本田)圭佑ももっとパフォーマンスを上げてもらわないと勝てない」と自戒も込め、MF本田にも容赦なく苦言を呈した。当然、強い危機感はチーム内で共有されていただろうが、それがようやく表にあらわれだした。
本番前最後の試合となったパラグアイ戦。出番の少なかった選手で戦い、西野体制の初得点と初勝利を手にした。W杯に出場しない強度の緩い相手とはいえ、FW岡崎、MF香川ら追い込まれた選手のパフォーマンスは見る者に伝わるものがあった。
長友は「戦術はスイス戦と変わったわけじゃない。泥くさく、格好つけずに飛び込んでスライディングして、ベテランのそういう姿勢が若手に伝わる。僕はそう信じている」と戦いの原点を説いた。出番こそなかったが、ベンチから声を枯らせた。「髪を明るくしたから多少は幸運が舞い降りてきたかな。負けていたら坊主にしなきゃいけないところだった。大事なサッカーの結果で明るいニュースが届けられて良かった」と話す姿は私心を超え、心の底からチームの勝利を喜んでいた。
厳しい逆風にさらされた日本代表。それは自ら呼び込んだ側面も否めない。13日には空路でベースキャンプ地カザンに入った。その背中を押す、追い風が吹き始めたことを信じたい。(デイリースポーツ・山本直弘)