西野ジャパン“サランスクの奇跡”起こした 采配ズバリ!14年の雪辱果たした
「ロシアW杯・H組、コロンビア1-2日本」(19日、サランスク)
“サランスクの奇跡”が起きた。2010年大会以来2大会ぶりの決勝トーナメント進出を目指す日本は、前回大会ベスト8のコロンビアとの初戦に2-1で勝利した。前半6分にMF香川真司(29)=ドルトムント=がPKを決めて先制。1-1の後半28分、FW大迫勇也(28)=ブレーメン=が左CKから頭で勝ち越しゴールを決めた。チーム一丸でつかんだ歴史的な勝利。西野JAPANが最高のスタートを切った。
まるで大いなる何者かの意志に導かれるように、奇跡への道を完遂した。勝利を告げる笛が響くよりも一瞬早く、ベンチの選手たちはピッチに駆け出していた。普段は控えめな西野監督も両手を頭上でたたき、喜びを表現する。光り輝く一枚岩が、南米の雄を打ち砕いた。
想像以上の追い風が吹いた。相手のキーマンと目していたMFロドリゲスが、コンディション難でベンチスタート。さらに開始3分、相手DFのC・サンチェスが手を使って得点機会を阻止して退場し、PKも獲得。貴重な先制点を得るだけではなく、残り87分間の数的優位も確保した。一時はセットプレーから同点に追いつかれるも、後半28分には途中出場のMF本田のCKからFW大迫が決勝点。W杯の舞台では“鬼門”となっていた南米勢相手に、初勝利を飾った。
何もかもが“ハマった”。「立ち上がりからアグレッシブ」に行くという試みは、主力の負傷で相手センターバックが急造コンビに効果抜群。PK獲得につながった。さらに立ち上がりから11対10となり、1点リードしたことで、指揮官が思い描いていた「自分たちからアクションを起こした中で、ボールをゲームをコントロールしていきたい」というプランも有効に。決勝アシストの本田など、振るったタクトはどれも結果につながった。
試合後、自身が持つ“運”の太さについて問われると、指揮官は「何とお答えして良いかわかりませんが…。いろんな評価を頂いていますが、結果を出す中で示したいなと。運だけではなく、良い選手に恵まれているなと思います」。選手たちはサランスク入りした17日夜に選手間ミーティングを実施。それぞれの思いが集約されて出た結論は「それぞれ役割があるので。それをチームのために全うできるかどうか」。すべてはこの戦いで勝つために、誰もが全力を尽くすと決めた。
チームを支えるスタッフも気持ちは一つだった。チームに帯同している西シェフは、決戦当時の朝食で、西野監督の“勝負飯”でもある山芋のすり下ろしを出した。明太子も添えて紅白を作り「右側に紅を置くのが正式なものだから」と配置にも気を使った。
自身初のW杯で、初勝利。大会前に話していた「小さな奇跡」を達成も「喜ぶのはグループリーグを突破してからですね」。さらに、今回と同じ南米、アフリカ、欧州という順で対戦し、2勝1敗ながら敗退した22年前のアトランタ五輪を引き合いに「同じ轍(てつ)は踏まないようにします」。奇跡には、まだ続きがある。