「ロシアＷ杯・Ｈ組、日本２－２セネガル」（２４日、エカテリンブルク）

　Ｈ組で国際サッカー連盟（ＦＩＦＡ）ランキング６１位の日本は同２７位のセネガルと２－２で引き分けて１勝１分けとし、２大会ぶりの決勝トーナメント進出に前進した。常に先行を許したが、ＭＦ乾貴士（３０）＝ベティス＝とＭＦ本田圭佑（３２）＝パチューカ＝のゴールで２度追い付く粘りを見せた。日本はポーランドと対戦する２８日の１次リーグ最終戦で勝つか引き分ければ、自力で２大会ぶり３度目の決勝トーナメント進出を果たす。

　勝負師としては、納得がいかなかったのかもしれない。ドロー決着を告げるホイッスルがエカテリンブルクの空に響くと、西野監督は表情を大きく変えず、ダンディーに両手で髪の毛を整えた。「２度追い付いて攻撃的なところでは成長ぶりを出せたが、勝ち切りたかったです」。ただ、死に物狂いでもぎ取った勝ち点１は計り知れないほど大きい。

　値千金の同点弾は意地と矜持（きょうじ）が詰まっていた。１－２で迎えた後半３３分。右サイドからＦＷ大迫がクロスを上げると、途中出場のＦＷ岡崎は迷わず相手ＧＫに突っ込んでいく。逆サイドでこぼれ球を拾ったＭＦ乾の折り返しの際も、岡崎は相手ＧＫを巧みにブロック。丁寧に、かつ泥くさくつないだボールの前に待っていたのは同じく途中出場のＭＦ本田だった。

　虎視眈々（たんたん）とゴール前の位置取りを狙っていた金狼は、大事に左足を振り抜いた。歓喜に沸くスタジアムの片隅で、共に３２歳の途中出場コンビは“敬礼パフォーマンス”で互いをたたえ合った。「外していたらまずいシーンだったので、決められて良かった」。試合後、素直な思いが口を突いた。

　立ち上がりから予想外の事態に直面した。西野監督はスカウティング部門からの情報をもとに、セネガルの布陣を「４－４－２」と予想。カザンで行われた非公開の戦術練習でも、控え組を同布陣として“仮想セネガル”を意識させた中で調整を進めて来た。だが、開始と同時にセネガルが取ったシステムは「４－３－３」。事前の作戦の即時修正を余儀なくされた。

　自陣ゴール前でミスが重なると、失点につながる。プレー強度の極めて高いＷ杯では、ほとんど“常識”となっている出来事が起きた。左サイドからのクロスに、フリーの状態だったＭＦ原口がヘディングでクリアミス。相手ＤＦサバリにシュートを許すと、ＧＫ川島は正面のボールをパンチングで目の前のＦＷマネにぶつけるミスを犯す。開始わずか１１分で失点した。

　過去のＷ杯で、日本が先制を許した試合は１分け６敗。勝ち点をつかんだのは０２年日韓大会のベルギー戦のみと、追いかける展開は困難になる大会だが、前半３４分に乾の美しいシュートで同点。後半２６分には再び突き放されるなど、何度も窮地に立たされた。それでも、試合前に「多少のリスクがあっても、勝負をかける２戦目でなければいけない」と話していた西野監督は本田、岡崎、ＭＦ宇佐美とすべて攻撃の選手で３枚の交代カードを切った。

　勝って決められなかった。ただ、前に進んだ。最後まで愚直にゴールを目指したことが、大きな勝ち点１につながった。