宇佐美 W杯初先発起用に応えられず 西野監督の“申し子”不発
「ロシアW杯・H組、日本0-1ポーランド」(28日、ボルゴグラード)
日本は0-1でポーランドに敗れたが、大会規定により同組2位で2大会ぶり3度目の決勝トーナメント進出を決めた。コロンビアに0-1で敗れたセネガルとともに勝ち点4で、得失点差、総得点、直接対決の結果でも並んだが、警告や退場による「フェアプレーポイント(FP)」の差で上回った。
灼熱(しゃくねつ)のボルゴグラードを宇佐美貴史(26)=デュッセルドルフ=が懸命に駆けた。自身初のW杯で左MFとして今大会大会初先発を果たした。前半35分にはドリブルでペナルティーエリア内に進入。角度のない位置から強烈な右足シュートを放ったが、相手GKの好守に阻まれた。
セネガル戦の後半42分に途中出場で念願のW杯初出場も、プレー時間はアディショナルタイムも含めて7分半足らず。「今まで感じたことのないスピードで時間が過ぎた。体感的には1分半くらいで終わった感じ」と、悔しさの入り交じった口調で振り返った。
G大阪時代から宇佐美を知る西野監督の“申し子”として、就任後から主戦として重用された。だが、大会直前のパラグアイ戦で2得点を挙げた乾の活躍によって序列は覆り、タッチラインの外側に追いやられた。それでも「出たらどうするかという気持ちを積み重ねていくことがすごく大事」と腐らず黙々とボールを追った。
少年時代から“天才”と称され、将来を期待された。G大阪ジュニアユース時代に宇佐美を指導した鴨川幸司氏は「ボールを持った時の攻撃のプレーは誰もまねできないものを持っていた」と話す一方で「もっとハードワークとか覚えさせれば」と振り返った。
暑い夏の練習で集中力を欠いたチームに罰走を科した時のことだった。鴨川氏のところに宇佐美がやって来て言った。「ちゃんと練習やるんで、罰走なんかしても意味ないんで、ボール触らせてください」と進言してきた。「そんなことを言ってきても僕は許さないんだけど」と鴨川氏は話すが、「何でも問題意識持ってやっていたということ」と目を細めた。鴨川氏に物申してきたのは「(本田)圭佑、堂安の3人くらいだった」という。
夢に見たW杯だった。出場機会を求めてドイツ2部デュッセルドルフに移籍。1部昇格に貢献して、W杯メンバーに滑り込んだ。メンバー発表会見は家族とテレビで見た。宇佐美の名前が呼ばれた時、妻の蘭さんは涙を流したという。「サッカーのことで泣いたのは初めてだったので、自分の成し遂げたことを実感した」と感慨深げに話した。
1点を先制された後半20分に、乾との交代でうつむきながらピッチを後にした。初のW杯で確かな爪痕を残すことはできなかったがこの悔しさは決勝トーナメントで晴らす。