西野監督、負けて時間潰しは「不本意」「究極の選択」 長谷部に指示、警告数も伝える
「ロシアW杯・H組、日本0-1ポーランド」(28日、ボルゴグラード)
日本はポーランドに敗れたが、フェアプレーポイントと呼ばれる数値の差で他会場で敗れたセネガルを上回り、H組2位で2大会ぶりの決勝トーナメント進出を決めた。試合後の会見で、他会場の結果頼みとなる試合終盤の時間つぶし戦略をとった西野朗監督は会見で「究極の選択だったかもしれない」と苦渋の決断だったと振り返った。
結果論にはなるが、もしもセネガル-コロンビアの試合で、セネガルが同点に追いついていたら、日本が0-1のまま試合を終わらせても1次リーグ敗退が決まっていた。一方、日本が同点に追いつけば自力での突破が決まる。自力か、他力か。ポーランドとの力関係を考慮して絞りだした結論が“負けているのに時間稼ぎ”だった。
「万が一という状況は、このピッチ上でもさらに考えられた。もちろん他会場でも万が一ということがある。選択があるのは、そのままの状態をキープすること。これは間違いなく、他力の選択。自分に本意ではない選択をしている」
会見でそう振り返った西野監督は「最終的にピッチに自分が送ったメッセージはこのままで良いということ。選手はそれはまっとうした。いかなるブーイングも負けずにやった。私のメッセージを忠実に遂行した」と指示を守った選手たちをねぎらった。
国内のクラブを指揮していた時から通じても、「勝利」をいかなる時も追求する西野監督の辞書にはない選択だった。「ただ、状況はこういう状況。自分の中にないプランを迫られた中で、選択したのは他力。自分の心情としては不本意。ただ、選手には遂行した」とこの結論に至った中での心境の移ろいを振り返った。「W杯にはそういう戦いがあって。その選択が正解と出れば、それも勝負に勝ったということかなと、チームにも思いたい。そういうサッカー、フットボールがあってもいいのかと初めて感じた」と自身にとっても気づきがあったとし、「究極の選択だったかもしれない。自力でという形ではなく、他力を選んだチームに後悔は少しはあるかな」と心境を吐露した。また、結果が伴ったことには「今までアグレッシブな戦いに運がついた、ほほ笑んでくれたかな」と表現した。
客席からは大ブーイングを浴びせられたが、「選手たちにブーイングを浴びせられながらプレーさせたのも、自分の心情ではない。これから選手にはいろいろ伝えたいなと思います」とした。
0-0で前半を終えた段階では「守り切る頭(発想)をここに置いてピッチに出てくれ」とロッカールームで選手に求めたという。そんな中、日本が失点し、セネガルも失点した。「時間と共に、また他会場が動いた中で、時間が刻まれていく中で自分の選択が変わっている。長谷部を入れたのは、今の状況を彼に伝えた。ハイリスクな中、イエローカードの状況も指示した」とフェアプレーポイントを意識し3人目の交代として長谷部を選択したという。「長谷部の投入がすべてだった、長谷部が一歩入る時に、状況が変わったらすぐに教えてくださいと(スタッフに伝えた)。行く前にはカードの状況まで伝えました」と、ギリギリの選択だったと振り返った。 「ゲームの敗戦を考えれば、これは不本意です」と想定外の戦術だったことを強調した指揮官は「ただ、ステージを上がれたという。そこだけですかね、救いは」と語った。