本田、代表引退示唆 近い将来現役も…「4年後考えられない」本気で目指した優勝
「ロシアW杯・1回戦、ベルギー3-2日本」(2日、ロストフナドヌー)
日本代表MF本田圭佑(32)=パチューカ=が2日(日本時間3日)、史上初の8強入りを逃した決勝トーナメント1回戦・ベルギー戦後、「4年後は考えられない」とW杯は今大会が最後と明言した。また近い将来の代表引退、現役引退を示唆した。本田は2008年6月に代表デビュー。今大会でも1次リーグ第2戦のセネガル戦で同点弾をマークするなど、長きにわたって代表をけん引してきた。
その時がやって来た。問われるまでもなく、本田は自ら語り始めた。「僕にとって最後のW杯になる。4年後は考えられない」。一時代の終焉(しゅうえん)を告げた。W杯カタール大会が開催される22年には36歳に達する。今大会同様に切り札としてなら-。だが、それは本田の流儀に反する。「自分のためのW杯なら同じような役回りで出られる可能性もあるが、そういうことじゃない」。未練を断ち切るように、前を見据えて断言した。
その言葉は代表引退をも意味するのか。「それは現役のところとリンクする。現役をどう続けていくか、そこは整理して、ここで中途半端に発言できない」。遠くない将来の現役引退も視野に入れていることを示唆した。
一振りに懸けていた。後半36分に投入され、中村俊輔に並び日本歴代8位となる通算98試合目のピッチに立った。「同点で出るシチュエーションを想定していた」と、同48分には渾身(こんしん)の無回転FKを左隅に放ったが、勝ち越しのゴールネットには届かなかった。延長戦突入もよぎった直後のCK。本田が蹴ったボールがGKクルトワの手に収まり、カウンターの餌食になった。
「集大成」と位置付けたW杯だった。32歳を迎えた6月13日。誕生日を祝ってくれたチームメートの前で打ち明けた。「W杯が終わった後に自分の人生が終わるとしたらどういう決断をしていくかっていうつもりでこのW杯を過ごしたい」
“人生の終わり”に後悔を残したくない。その一心で、西野監督や仲間に偽りない思いをぶつけるうちに、思わぬ変化が訪れた。「本当に選手のみんなを好きになったし、こんなになると思わなかったくらい好きになった。そういうふうな感じで今後も人生を歩めると、いろんな人を好きになれるかな」。少しうつむき加減で浮かべた照れ笑いは、事前合宿からの1カ月間で見せたことのなかった穏やかなものだった。
ずっと大きな存在になりたかった。石川・星稜高の先輩、松井秀喜に憧れ、その背中を追った。「松井さんのようにビッグになりたい」。高校時代、松井がミズノ社製の用具を使用していると聞くと、当時のサッカー部が他社メーカーを使用していたにもかかわらず、一人ミズノ社製のスパイクに変えた。その足元は今も変わらない。
届かなかった夢を次の世代に託す。「優勝を目指してそれが果たせなかった。この意志を次の若手に引き継いでもらいたい」と願いを込めた。「誰に何て言われようが優勝と言い続けられるヤツが次の代表を引っ張っていく。それにふさわしいヤツは今回のW杯で何人か見つけてるんで頑張ってほしい」。後継者候補は既に見つけているようだ。
「小さい頃からこのために、本当に僕はこのためにやってきた。究極論、プロになるのも欧州で活躍するのも、W杯のためにやってきた。本当にW杯のためにやってきたから」。この日、最も力を込めた言葉だった。
W杯通算4得点は日本人最多。3大会連続得点とアシストを達成したのはアジア勢で初めてだった。「実力を出し切ったという意味では悔いはない」。今、持てる力は全て振り絞った。敗退の瞬間、泣き崩れる仲間もいる中、ピッチに立ち続けた。それは本田圭佑の矜持(きょうじ)だったのかもしれない。W杯に恋い焦がれ、そしてW杯に愛された男が、静かに舞台を去る。