メッシ悲願のV 決勝で2発&MVP“最後のW杯”でついに!アルゼンチン36年ぶり3度目制覇
「カタールW杯・決勝、アルゼンチン代表3(PK4-2)3フランス代表」(18日、ルサイル)
アルゼンチンがフランスをPK戦の激闘の末に倒し、9大会ぶり3度目の世界一に輝いた。大黒柱リオネル・メッシ(35)は2ゴールを決めて勝利に貢献。史上最多に並ぶ5度目のW杯出場で自身に欠けていた最後のビッグタイトルを手にし、1986年大会で優勝した母国の英雄ディエゴ・マラドーナに肩を並べた。今大会は1次リーグから決勝まで7試合にフル出場し、W杯通算26試合出場の歴代最多記録を樹立。史上初めて2度目の大会最優秀選手にも選ばれ「メッシの大会」は華々しいフィナーレを迎えた。
W杯をついに制したメッシが、仲間に肩車されて黄金のトロフィーを掲げる。その姿は、36年前に戴冠した「神の子」ディエゴ・マラドーナと重なった。同じ左利きで天才肌の背番号10。偉大な英雄と比較されて苦悩したメッシが、呪縛から解かれたように会心の笑顔で言った。「これが欲しかったんだ」
35歳となり最後と公言したW杯の決勝は、語り継がれるであろう激闘になった。メッシは前半23分に先制のPKを決め、2点差を追い付かれてからの延長後半3分、味方シュートのこぼれ球に詰めて大会7点目。再び同点とされて突入したPK戦は、先蹴りだった相手エースのキリアン・エムバペが力強くねじ込んでも余裕の表情だった。GKの逆を突いて左に転がし、胆力を見せつけた。
マラドーナはブエノスアイレス郊外のスラム街で育ち、1986年大会で頂点に立った。破天荒な人間性を象徴したのが、イングランドとの準々決勝でヘディングに見せかけて手で押し込んだ「神の手ゴール」。英国とのフォークランド紛争から4年と間もなかった因縁もあり、母国からは痛快だと喝采された。
一方、物静かな性格のメッシは派手な言動を好まない。プレーはフェアで、警告を受けることもまれだ。13歳からバルセロナ(スペイン)の下部組織で育った経歴は国民の共感を得にくく、マラドーナの野性的な幻影を追う人々からは不当な批判も浴びてきた。
ただメッシは、2度目のW杯で優勝した先達と常に比較されながら4度夢破れても挑み続けた。人を魅了するのは超絶技巧だけではない。バルセロナで黄金時代を築き、世界最優秀選手の称号を何度手にしても代表チームでの栄冠を渇望する姿にこそ、貧困層が4割を超え厳しい時代を生き抜く国民は共鳴した。
試合後、選手とサポーターが大合唱した応援歌はこんなフレーズから始まる。「俺はアルゼンチン生まれ。ディエゴとリオネルの国だ」。歓喜の歌声は、2年前に死去した天国のマラドーナにも届いたか。輝かしいキャリアに唯一欠けていたタイトルをつかみ、メッシもまた伝説となった。