映画監督の篠田正浩さん死去 94歳、「心中天網島」
戦後日本を代表する映像作家の一人で、「瀬戸内少年野球団」や「心中天網島」など幅広い主題で革新的な映像美を追求した映画監督の篠田正浩さんが25日午前4時55分、肺炎のため死去した。94歳。岐阜市出身。家族葬を行った。後日、お別れの会を開く予定。
早稲田大で駅伝ランナーとして活躍後、1953年松竹に助監督として入った。60年監督デビュー後、学生運動家を主人公にニヒリズムの美学を描いた2作目「乾いた湖」で注目を集め、大島渚、吉田喜重両監督らと共に若手世代を代表する「松竹ヌーベルバーグ」の旗手と呼ばれた。
松竹退社後の67年に妻で俳優の岩下志麻さんと、独立プロダクション「表現社」を設立。69年、岩下さんが出演し、近松門左衛門の人形浄瑠璃を大胆に脚色した「心中天網島」が高い評価を受け、代表作となった。
86年、「鑓の権三」でベルリン国際映画祭銀熊賞(芸術貢献賞)を受賞した。
戦前のゾルゲ事件を題材とした「スパイ・ゾルゲ」(2003年)を最後に映画監督を引退した。