マグロの解体ショー 今年は7000本突破
「天下の台所」「街のみなと」などで知られ、関西圏を中心に回転寿司、水産物小売店を営む「大起水産」が相変わらず超人気だ。その秘密は鮮度と安心、安全で手ごろな価格設定。それと、視覚にも訴えるダイナミックなマグロの解体ショーだ。この16、17日にエディオンアリーナ大阪で開かれた「第8回天下の台所 大阪まつり」では2日間で何と100本のマグロを解体。晴れて年間7000本の大台を突破した。
ボクシングの世界戦や大相撲春場所の舞台として知られるエディオンアリーナ大阪が食いしん坊の熱気に包まれていた。今年で8回目を迎えた「天下の台所 大阪まつり」には大起水産グループを中心に全国各地から50社が出店。もちろん、このイベントの目玉は名物のマグロ解体ショーだ。館内の半分に及ぶほどの堂々としたステージが設けられ、包丁を手にした職人たちが手際よく腕をふるう。3階には3000席の飲食スペースを用意。トロ2貫、中トロ2貫、赤身1貫+缶ビールで税込み1080円の本マグロ寿司盛り合わせセットが飛ぶように売れていく。
「昨年の解体ショーでは70本でしたが、今年はキリよく100本にしました。これで今年のトータルはマグロ7000本ですわ。1日あたり20本になりますな。まぁ、そんなことより、これをひとつ、どうぞ、どうぞ」
佐伯保信会長(72)に勧められ、中トロをぱくり。何とも言えない口当たり。「あぁ、幸せ~」。もう、取材どころじゃなくなりそうだ。「うまいでしょ」と会長も嬉しそうだ。
名物となっているこのマグロの解体ショー。実際に人件費を入れると1回につき、60万円ほどの経費が掛かるといい、採算が取れずに手を引く業者は多い。しかし、産地直送のシステムを確立し、神奈川県も含め33店舗ある大起水産グループにはスケールメリットがあり、飲食店と小売店を両輪とするビジネスモデルがそれを可能にしている。
「1日200万の売り上げがないと解体ショーは無理なんですよ。まぁ、採算はともかく、みなさんが驚き、喜んでくれる。五感全部でおいしさを味わっていただけるのが何よりです」
こう話す佐伯会長は愛媛出身。奉天で生まれ、「戦後すぐ」に日本へ引き揚げた。堺の高校を卒業し、塩干物の卸売りで修業するかたわら北海道にも足を運んだ。30歳となる1975年に起業。78年からはマグロに着目し、郊外店を出すなど事業を拡大していった。その間、88年から「ラジオ大阪」の自社番組にも出演しており、しゃべくりも達者だ。
最近ではロシア、アメリカ領事館などでもマグロ解体ショーを実演。大阪・天満橋の八軒屋浜での毎月第一日曜日(次回は来年1月7日)のイベントもいまや定番だ。
「大阪は昔から若狭、淡路、三重のおいしい魚が集まっていた天下の台所。その大阪から日本の食文化を世界にも伝えていきたい。もちろん、食は大衆にあり。お金持ちだけがおいしいもんを食べるのはおかしい」
創業42年。徹底した合理主義とあふれんばかりのサービス精神できょうも“鮮度のいいごちそう”を届けている。(デイリースポーツ特約記者・小林利行)